住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

住宅ローンの支払いが苦しくなったら-3-(2ページ目)

「住宅ローンの支払いをもうこれ以上続けられない」という事態になったときには、いったいどうすればよいのでしょうか? 住宅ローンを滞納したままで何もせずにいれば、やがて競売に! マイホームを失うだけでなく、家族が離散することにもなりかねません。競売にかけられる前に、自ら行動を起こして任意売却をすることも必要です。(初出:2010年4月)

執筆者:平野 雅之


任意売却で競売を避けられる!

競売であなたや家族が窮地に立たされる前に、少しでも有利な条件でマイホームを処分するのが「任意売却」という方法です。

マイホームを売却するときには、住宅ローン借入れのときに設定された抵当権を解除(抹消)してもらわなければなりません。この抵当権を解除するためには、原則として住宅ローンの残高をすべて一括して返済することが必要です。しかし、任意売却の場合には住宅ローンの一部を残したままで、金融機関側との話し合いによって抵当権を解除してもらうことになります。

任意売却といっても、その売りかたは通常の中古住宅、中古マンションを売り出す場合とほぼ同じですから(一般の売却よりも迅速性が求められますが)、あなたや家族の生活が行き詰まっていることを近所に知られることはありません。回りには「買い換えて引越すことにしたのよ」と言っておけば済むでしょう。

任意売却後に残った住宅ローン(残債務)を支払わなければならないことは競売のときと変わりませんが、競売のように低価格で処分されるのではなく通常の相場に近い水準で売却できますから、そのぶん残る債務もずっと少なくなります。

債権者(金融機関や保証会社、またはその債権を買い取ったサービサーなど)側にとっても、競売で処分するよりは任意売却のほうが早期に、かつ多くの金額を回収できます。言い換えれば、任意売却にすることが「債権者に対するあなたの誠意」だということにもなるでしょう。そのため残債務の支払いについても、債権者側が柔軟に対応してくれることを期待できるわけです。相手の債権者や事前の話し合いの内容にもよりますが、毎月1万円~3万円程度(あなたの生活再建に支障のない範囲)の支払いで合意してもらえるケースも多くなっています。

さらに、以前に比べればかなり厳しくなっているようですが、いくらかの引越し費用を出してもらえることも期待できます。また、任意売却であれば競売のときのように強引に(あなたや家族の都合を考慮されないまま)追い出されることはなく、買主側との話し合いによって引越しのタイミングにも柔軟に対応してもらえるでしょう。


任意売却の費用と不動産業者選び

任意売却は不動産業者の業務として行なわれますから、売買契約が成立すれば売主としての仲介手数料が必要となります。しかし、この費用は売却代金のなかからの配分として、債権者側より支払われます。また、売却に伴う諸費用(抵当権抹消費用、司法書士報酬など)やマンションにおける管理費修繕積立金の滞納分なども債権者側から支払われます。ただし、管理費などの滞納分についてはその金額が過大なときには取り扱いが異なる場合もあるほか、税金の滞納分については管轄する役所との話し合い次第で処理が変わる場合もあります。

原則としては、任意売却を依頼した人の「持ち出し負担」は生じないため、目先の費用を工面する必要はありません。不動産業者の手数料も成功報酬が原則ですから、通常であれば相談料などは発生しないはずです。

任意売却自体は、宅地建物取引業の免許を持った不動産業者であればどこでも取り扱うことができるものの、単に売却するだけではなく、残債務の支払い方法など売却後のあなたの生活再建を念頭においた債権者側との交渉が重要です。これらを含めて任意売却を成功に導くためには、ある程度の経験と専門的な知識を持った不動産業者でなければなりません。

任意売却を取り扱う不動産業者は、「任意売却センター」などのサイトで探すことができます。


自己破産も選択肢?

任意売却でも競売でも、残った債務については引き続き支払っていかなければなりませんが、自己破産を認められた場合にはこの支払いを免れることができます。

自己破産についてここで詳しく解説することは差し控えますが、申し立てをしてから免責の決定を受けるまで、一定の資格職の人はその仕事ができなく場合があります。また、一般的には弁護士に依頼をするのですが、その費用(弁護士報酬)もそれなりの金額になることが多いようです。

なお、自己破産をしてから任意売却または競売に至るケースと、後から自己破産をするケースとがありますが、先に自己破産をした場合には任意売却または競売のどちらかを選択するしかなく、他の回避方法が見つかったとしてもそれを実行することが難しくなります。

自己破産を選択すべきかどうかはケースバイケースで、連帯保証人などにかける迷惑の度合いもよく考えなければなりません。また、自己破産のデメリットは本人の考えかた次第の面も大きいでしょう。


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