いまも貸し出されている集合住宅、カサ・ミラ
カサ・ミラの屋上からパティオを見下ろす。スタジオ・ジブリのアニメに出てきそうな兵士のオブジェは、ローマ兵の兜を象っているのだとか
波のような壁面からなるカサ・ミラのファサード
まず、特異なのがその外観だ。波打つ壁面で構成されたファサードは単に曲線であるというだけでなく、左右・上下ともに非対称で、バルコニーの形はひとつとして同じものがない。海の中にたゆたうサンゴのような、あるいは世界遺産『メサ・ヴェルデ国立公園(アメリカ)』や『バンディアガラの断崖[ドゴン人の地](マリ)』のような岩窟住居を思わせる。地元の人たちが名づけたという「石切り場(ラ・ペドレラ)」の俗称も理解できる。
カサ・ミラ屋上のオブジェ
屋上はカサ・パトリョ、グエル邸と同じように曲線で構成されており、不思議な形をした煙突オブジェが見られる。
イスラム・キリスト教建築の融合、カサ・ビセンス
ガウディがはじめて独立した建築物全体のデザインを担当したカサ・ビセンス。世界各地のデザインの影響をそこかしこに見ることができる
ムデハル様式の影響が顕著なカサ・ビセンスのファサード
15世紀にレコンキスタ(国土回復運動)が完了するまでスペインはイスラム教国の支配下にあった。このためイスラム文化の影響が色濃く、スペイン成立後にはイスラム建築とキリスト教建築が融合してムデハル様式と呼ばれる独自の建築様式が誕生した。
そして大航海時代以降、新大陸の文化を取り入れて、建物に貝殻や魚といった海産物の彫刻をあしらうようになる。ポルトガルのマヌエル様式であり、スペインのイザベラ様式だ。また、花や植物紋様は古くからイスラム建築で多用されていたし、19~20世紀になるとアールヌーヴォーに取り入れられて大流行した。そのアールヌーヴォーがスペインに渡って花開いたのがモデルニスモだ。
カサ・ビセンスはこれらの建築様式の影響を多分に受けており、その後のガウディのデザインが突然変異のように誕生したわけではないことをよく表している。