心機一転「パリ-アッシュ」をオープン
本格食事パンのラインナップも増えた
5年前の取材で、自分のつくるセーグル(ライ麦パン)は子供のころの記憶、大好きだったお祖母さんのイメージから生まれたと教えてくれた天野さん。今もそれは変わらずで、わたしはそのセーグルとさまざまなバリエーションを最もアッシュらしいパンだと思います。
贅沢に使用したドライフルーツ
リニューアルしても変わらないのはそんなふうにパンが生まれるところ。引くことをせず、油絵のように足しながらパンをつくりこんでいく方法。そして、誰かを喜ばせようと思ってパンをつくっているところ。
パリにあるようなヴィエノワズリ
渡仏によって変わったのは、バゲットやカンパーニュやヴィエノワズリなどフランスの伝統的なパンに対する畏敬の念が強まったことだったそうです。脈々と続いてきたパンやお菓子を日本人の口に合うようにしたり、自分流に変化させたりはしない、ということ。
パリッと焼けているフランス小麦のバゲットとバタール
一方で、たとえフランス的でなくても、「自分にしかつくれないパンがある。あってもいいと思えるようになった」と天野さんは言います。きっかけは大阪の「HAJIME」というレストラン。「伝統的なフレンチの手法を大切にしながら、地球をテーマに川や空を皿の上に自在に表現している料理と出合って、肩の力が抜けたんです。自分の世界観を持って、自分にしかできないことを誇りにしていったらいいと思ったんです」。
独創的なフランボワズィエ(240円)はフランボワーズと黒豆のパン。
そして新生パリ-アッシュには、パリに引けを取らないトラディショナルなパンと、アッシュならではの独創性あふれる楽しいパンが並んでいます。
各種タルトフランベ
店名の「アッシュ」は天野さんのお名前、hisamichi(尚道)の"h"のフランス読みで、「パリ」は先述の、この界隈の雰囲気にも関係がありますが、「パリ的なもの」と「アッシュ的なもの」で構成されているお店、と思ってもいいかもしれません。