マネジメント/マネジメント事例

サッカー日本代表、早過ぎる敗退に学ぶマネジメント論(2ページ目)

サッカーのワールドカップ・ブラジル大会は、0勝2敗1分で日本代表チームのグループリーグ敗退が決まりました。大会前の下馬評では決勝トーナメント進出は確実と言われながら、結果はグループ最下位という惨敗。その原因はどこにあったのか。競技としての専門的な観点は抜きに、組織として大会に臨むマネジメント戦略的な観点から分析してみます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

ソニー、サムスンに見る「強い市場」で戦う恩恵

まず、企業の競争戦略マネジメントを考えるとき、企業の競争力を高め、組織の総合力向上に資するものとして、競争水準の高いマーケットへの参入戦略があります。例えばソニー。町工場から世界企業に発展した陰には、競争水準の高いマーケットに身を置くことで自社の実力を高めていったという事実はよく知られているところです。

解説

世界のソニーも成長を支えたのも市場のレベルアップ

ソニーにおける初期のトランジスタ技術。町工場だった同社が開発した最新技術を独占することなく、逆に国内大手各社にその活用を促すことで市場のレベルアップをはかり、日本のトランジスタ市場は水準を上げながら国際競争に入っていくことになります。しかし、そのことが市場に身を置くソニー自身に知らず知らずのうちに実力を蓄えさせることになり、世界に通用する技術力を持った一流企業としての道を歩むきっかけを作ったのです。

似た例をもうひとつ挙げるなら、以前は日本企業に比べ技術的にはるかに劣っていたサムスン。同社は国策の後押しもあって世界市場に打って出、世界の一流企業と技術、コストを戦わせ、しのぎを削ることでその実力を高めました。「安かろう悪かろう」がいつしか「安かろう良かろう」に変わり、日本企業を脅かす存在になったのは、ソニーの例と全く同じ理由によるものであると言えるのです。

この考え方は企業戦略にとどまる話ではありません。スポーツの世界も全く同じ。様々なスポーツの世界を見る限り、「実力は環境が育てる」はスポーツ界においても厳然たる事実として成り立っています。だからこそ、各競技で国内の一流選手はさらなる高みをめざし海外の一流マーケットへ旅立っていくのです。

強い者と戦っていればたとえ負けていようとも、学ぶことが多く自然と実力は増すでしょう。しかし弱い者と戦っているなら例え勝ち続けていようと学ぶことは僅かで、強くなることはおろか、知らず知らず成長を放棄するような流れにもなりかねないのです。

サッカー日本代表チームの前回の躍進、今回の惨敗に原因はまさしくそこにあったのではないでしょうか。サッカーに関しては素人の私ですが、今大会初戦のコートジボワール戦が結果的に雌雄を決した一戦であったと考えるなら、あの試合における日本チームの緩慢な動きは「直前の数試合で弱い者マーケットに馴らされてしまったお山の大将が、強豪を相手にして自分のペースをつかめないまま負けた」、競争戦略マネジメントからはそんな一戦に見えてしまうのです。

個々の選手は世界で腕を磨いていたにもかかわらず、大会直前でのチームとしてのレベルダウンがそこにはあったのではないでしょうか。だとすれば、大会直前の国際試合のコーディネートにこそ、問題があったと考えられるのです。

マネジメントに学ぶことは、あらゆる世界において勝つための法則を手に入れるヒントにつながると改めて実感いただける事例であると言えそうです。
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