ソニー、サムスンに見る「強い市場」で戦う恩恵
まず、企業の競争戦略マネジメントを考えるとき、企業の競争力を高め、組織の総合力向上に資するものとして、競争水準の高いマーケットへの参入戦略があります。例えばソニー。町工場から世界企業に発展した陰には、競争水準の高いマーケットに身を置くことで自社の実力を高めていったという事実はよく知られているところです。世界のソニーも成長を支えたのも市場のレベルアップ
似た例をもうひとつ挙げるなら、以前は日本企業に比べ技術的にはるかに劣っていたサムスン。同社は国策の後押しもあって世界市場に打って出、世界の一流企業と技術、コストを戦わせ、しのぎを削ることでその実力を高めました。「安かろう悪かろう」がいつしか「安かろう良かろう」に変わり、日本企業を脅かす存在になったのは、ソニーの例と全く同じ理由によるものであると言えるのです。
この考え方は企業戦略にとどまる話ではありません。スポーツの世界も全く同じ。様々なスポーツの世界を見る限り、「実力は環境が育てる」はスポーツ界においても厳然たる事実として成り立っています。だからこそ、各競技で国内の一流選手はさらなる高みをめざし海外の一流マーケットへ旅立っていくのです。
強い者と戦っていればたとえ負けていようとも、学ぶことが多く自然と実力は増すでしょう。しかし弱い者と戦っているなら例え勝ち続けていようと学ぶことは僅かで、強くなることはおろか、知らず知らず成長を放棄するような流れにもなりかねないのです。
サッカー日本代表チームの前回の躍進、今回の惨敗に原因はまさしくそこにあったのではないでしょうか。サッカーに関しては素人の私ですが、今大会初戦のコートジボワール戦が結果的に雌雄を決した一戦であったと考えるなら、あの試合における日本チームの緩慢な動きは「直前の数試合で弱い者マーケットに馴らされてしまったお山の大将が、強豪を相手にして自分のペースをつかめないまま負けた」、競争戦略マネジメントからはそんな一戦に見えてしまうのです。
個々の選手は世界で腕を磨いていたにもかかわらず、大会直前でのチームとしてのレベルダウンがそこにはあったのではないでしょうか。だとすれば、大会直前の国際試合のコーディネートにこそ、問題があったと考えられるのです。
マネジメントに学ぶことは、あらゆる世界において勝つための法則を手に入れるヒントにつながると改めて実感いただける事例であると言えそうです。