オーチャードホールの魅力とは?
熊川>10周年記念公演のときもオーチャードホールで踊りましたが、あのときは今は亡き巨匠、ローラン・プティがオーチャードホールのために、そして僕のためにラヴェルの『ボレロ』を振り付けてくださいました。それが、僕の心の中に大切な思い出となって残っています。日本に帰ってくるたびに、オーチャードホールという舞台は自分のホームとして、常に居心地の良い場所として、我々アーティストを温かく迎えてくれました。そうした関係性もあり、三年前に芸術監督のお話をいただいたときは素直に喜んだ記憶があります。
オーチャードホールの一番の魅力として、まず挙げられるのは立地です。ポップカルチャーとハイカルチャーが融合する場所というのは、イギリスならウエスト・エンド、アメリカであればブロードウェイと、とても恵まれた場所にあります。人間が成長する過程において、ポップカルチャーとハイカルチャーを通過していくのはとても理想であると感じます。
オーチャードホールは他に類をみない素晴らしい劇場だと思います。何百年という歴史を持ち、シェイクスピア作品がいまだに残るヨーロッパの劇場と比べれば、25年というのはほんのたったひとときの時間でしかない。そういう時代背景を持つ劇場が、日本にもあって欲しいという切な願いがあります。未来永劫ここオーチャードホールには輝いて欲しいし、素晴らしいイズムを残していただきたいと思います。
東京二期会オペラ劇場
『こうもり』 (C)三枝近志
吉田>やはりこの渋谷という立地はとても重要だと思います。コヴェント・ガーデンで踊っていたときもそうですが、こういう場所に劇場があるというのは非常に重要なことだと感じるし、大切に守っていけたらと思います。
広上>オーチャードホールには、オーケストラ・ピットから音が出るときの音響に独特なものがあります。よく響き、空間に一度音がバウンドしてお客さまに届くし、キャパシティもかなりある。寛容なホールとして、これからも活躍して欲しいと思っています。
東京フィルハーモニー交響楽団