アイルランド/ダブリンの観光スポット

文学の国の歴史に迫るダブリンライターズミュージアム(2ページ目)

文学の国といわれるほど数多くの文豪を輩出しているアイルランド。この国の文学の歴史を紹介し文豪たちの人生にスポットをあてた展示に定評のあるダブリンライターズミュージアムの見どころをご紹介いたします。

執筆者:原 貴子

同じ時を生きた作家たちの人生から時代の風景を垣間見る

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写真でも個性が出てます。オスカー・ワイルド

このミュージアムの展示の切り口のおもしろいところは、それぞれの時代に生きた作家たちの人生を合わせて紹介していること。ひとりの文豪ごとに紹介されていれば見逃してしまうような作家同士の関わりや、同じ時代に生きた作家たちの人生からその時代の全体像を想像したりできるのも興味深いところです。

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メリオンスクエアには、オスカーワイルドの紡いだ言葉も刻まれている

たとえば作家のオスカー・ワイルド。彼はすでに数々の名作を生み出し、名声を手に入れていた時期に同性愛を原因にイギリスで牢屋に入れられ、そこで心身を病み、46歳のときにパリで亡くなったことが作品とともに紹介されています。今のダブリンでは毎年盛大なゲイパレートが行われ、パレードの終点は彼がかつて住んだメリオンスクエアのあたりです。100年ほど前まで生きていたオスカー・ワイルドが今のダブリンを見たらどんなことを思うかな、なんて展示を見ながら思わず考えてしまいました。

また同じコーナーで紹介されているのが、オスカー・ワイルドと同じ時代を生きた作家ジョージ・バーナード・ショー。彼はオスカー・ワイルドよりも50年近く長く生き、ノーベル文学賞を受賞しただけでなく、代表作である戯曲「ピグマリオン」は「マイフェアレディ」として映画化もされ、現代まで語り継がれているアイルランド文学のひとつといえるでしょう。

こんな風に、作家たちの生きた時代から作品の背景となった時代に想像してみたり、時に対照的なそれぞれの人生を垣間みれるのも面白いところだと思います。

 

アイルランドという国だからこそ生まれた文学

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決して穏やかではなかったこの国の歩んだ道から生まれた文学も

イギリスに支配されていた700年以上の時間、アイルランド独自の文化を復興させようという文化的気運が高まった時期、独立をめぐって闘った時代。これらの出来事はアイルランドという国ならではの出来事で、またその時代だからこそ生まれた文学、作家同士の文学的関わりというものもあったようです。

たとえばケルト文学復興運動の中では、生粋のカトリック系国家主義者と英国系アイルランド人の地主など、異なる主義主張の人間をも結びつけた文学的な交流があったことも伝えられています。文学というものが媒介となり、歴史の史料を見るだけでは想像し得ないようなこのような出来事があったのが興味深いところです。

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面白そうなキャラクターが伝わってくる?ブレンダン・べーハンの胸像

イギリスの支配を経てアイルランド語から英語を話すようになったアイルランド人。今でも学校ではアイルランド語の授業があったり、アイルランド語のみで授業を行う学校も少ないながらあったりと、もうひとつの母国語の保存活動は行われています。

このような失われ行く言葉が存在するこの国で、アイルランド語と深い関わりを持つ作家として、アイルランド語でも作品を残したブレンダン・べーハンという作家が挙げられます。彼の作品とその人生もライターズミュージアムで紹介されています。アイルランド人らしくよく飲むことで有名で「ただ2つの機会に飲む。喉が渇いている時と、そうでない時だけ」という言葉を残し、ユニークな作家としても有名。アイルランド語を学んだのも収監された刑務所の中だったそうですよ。このように、日本ではあまりメジャーでなくても興味深い作家や作品との出会いも期待できるのはこのミュージアムならではでしょう。

 

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ジェームス・ジョイスの家にあったというピアノ

時代という切り口とともに文豪たちの軌跡を紹介するダブリンライターズミュージアム。なかにはジョイスが持っていたピアノなど、文学好きでなくとも楽しめるような文豪ゆかりの品々などとも展示されているので、ぜひ訪れてみてほしいと思います。足を踏み入れたら、思いのほかじっくり展示に見入ってしまうなんてこともあるかもしれません。

<DATA>
■Dublin Writers Museum
住所:18 Parnell Square, Dublin 1
開館時間:月~土10:00~17:00(最終入場16:15)、日・祝日11:00~17:00(最終入場16:15)
料金:大人7.5ユーロ、子ども4.7ユーロ
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