ブレない味造りは若き杜氏の技と少量生産と四季醸造
落ち着きと華やかさが楽しめる伊勢型紙のラベル
「伊勢というと伊勢市や伊勢神宮がイメージされますが、実は、桑名市から伊勢市まで一帯がすべて伊勢と名乗れるのです。とくに鈴鹿はその中心。昔から交通の要所でもあり、軍事基地や国分寺や国府がありました」と清水社長。鈴鹿と言えばサーキットを思い浮かべるが、実は歴史深い、匠の技の町であったのだ。
さて、ここからお酒の話。
蒸し米を入れたばかりのタンクをかき混ぜる、重労働
お蔵を拝見した。現在、清水清三郎商店(株)は500~600石という小規模生産。なにより、あの味わいを生み出すキーパーソンは杜氏さんだ。41歳ながら16年のキャリアを積む地元出身の内山智弘氏。なんとお酒は全く飲めないとか。試飲会では2回救急車で運ばれたこともあると笑う姿はとてもチャーミングだ。
しかし、だからこそ、あの清らかで、一切雑味のない、ぶれない味造りができるのだろう。酒の香りをかぐ眼は誰より真剣だ。現在内山杜氏を含め3人で酒造りを行っている。
右が清水社長、左が内山杜氏
もうひとつのキーは、丁寧な少量生産。800キロサイズのタンクを使用する。これは、全国新酒鑑評会などプロの審査を受ける際の出品酒を造る量で、かなり小さい。清水清三郎商店(株)では基本このサイズでの酒造りを行う。手間はかかるが、丁寧に少量づつを醸すことによって、繊細できれいな味わいを生み出せるのだ。
三つ目のキーは、四季醸造。通常、酒造りは冬に行うものだが、比較的新しい蔵という強みでいち早く冷却設備を整え、温度管理をきめ細やかに行うことができる蔵にした。さらに季節雇用の杜氏ではなく社員杜氏としたことで、1年を通じて酒造りを行うことができるのだ。
鈴鹿の味酒(うまさけ)と伊勢型紙は地元の資源
美しい藤色の純米吟醸は「風舞い藤」
「地元の資源をもっと知ってもらいたくて」という清水社長の希望をもと、2013年、メイン商品である「鈴鹿川」ブランドのラベルをすべて「伊勢型紙」のデザインに一新した。デザイナーは東京のウエムラデザイン、アートディレクターである上村泰氏。上村氏はこの鈴鹿が気に入って今や住まいも設けたほど惚れ込んでいる。
伊勢鈴鹿の味酒(うまさけ)と「伊勢型紙」の融合。
粋な色合いの吟醸は「そぞろ筆のなぞり彫り」
ラインナップとラベルデザインは、以下の通り。
「芳醇旨口 純米大吟醸」&「中形菊」
「麗醇旨口 大吟醸」&「富貴牡丹」
「爽薫旨口 吟醸」&「そぞろ筆のなぞり彫り」
「爽快旨口 純米」&「紅梅白梅」
「華麗旨口 純米吟醸」&「風舞い藤」。
デザインの詳細はHPで。
小紋柄のネーミングもなんとも粋だ。
クラシックな柄がモダンなイメージに変わる
また、昨年は鈴鹿市制70周年を記念して、菊の文様をあしらった「SUZUKA 70 ”Suzuka City 70years Anniversary bottle”純米大吟醸 鈴鹿川 味酒鈴鹿国」が発売されている。
FIFA公式の「作」ボトル。サッカーの応援はこれを飲みながら!
さらに、人気のシリーズ「作」には、はせがわ酒店プロデュースの「2014FIFAワールドカップブラジル大会公式認定ラベル」もある。なんでも今年は中田英寿氏が日本酒アンバサダーとなり、期間中、現地で日本酒バーを開設するとか。サッカー&日本酒好きにはたまらないニュースだ。
これはまさに「モダン・ジャポニズム」だ
鈴鹿の料理屋さんやお宿ならこのお皿を使ってほしいもの
さて、鈴鹿川×「伊勢型紙」のシリーズ。洗練された味わいの酒が、「伊勢型紙」の伝統小紋柄をまとうことによって、不思議とよりモダンに感じられるからおもしろい。
「日本酒に興味のない人にも、ジャケ買いをしてもらえればいい」とは清水社長。
たしかにこのボトルなら、若い人や外国人、芸術感度の高い人にも手に取ってもらえるだろう。そこから日本酒のおいしさに目覚めてくれればこれほどうれしいことはない。最近は官民一体となって推進する、かっこいい日本文化を輸出しようとする「クールジャパン」や、外国人に日本観光に来てもらう「ビジットジャパン」が稼働しはじめている。
こんな素敵な使用も可能
小紋柄の着物を着た日本酒は世界の市場できっと目を引くだろうし、たとえば外国人が鈴鹿に来れば、駅で伊勢型紙のモニュメントでお迎えされ(これは友田の創造)、伊勢型紙の文様で飾られた宿に泊まり(これも創造)、伊勢型紙の食器や酒器(これはすでにある!)で郷土料理と「味酒鈴鹿国」の酒を飲む。これでどれだけ感動することだろう。これこそ地元ならではの「おもてなしジャパン」ではなかろうか。
外国人でなくても、日本人のあなたも、鈴鹿で一度これを体験するべき。日本には世界に誇れる文化があちこちにある。今回は、鈴鹿の酒がまたこれを思い出させてくれた。
清水清三郎商店