労務管理/就業規則の基礎知識

ワークライフバランス!上手に有給休暇を導入しよう

労働基準法で規定されている「年次有給休暇」。原則は「日単位」での付与ですが、労働者が希望して取得時季を指定し、企業が同意した場合には「半日単位」での付与が可能です。また、労使協定で定めれば「時間単位」での付与も可能となっています。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が叫ばれる社会経済状況下です。積極的に上記の弾力的付与の導入を検討してみてはいかがでしょう。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

付与単位は「1日」・「半日」・「時間」の3パターン!

時間単位・半日単位年休でワークライフバランスを進めましょう

時間単位・半日単位年休でワークライフバランスを進めましょう

労働基準法で規定されている「年次有給休暇」(以下「年休」と呼びます)。労働者にとって関心が高い労働条件の一つですね。原則は「日単位」での付与ですが、労働者が希望して取得時季を指定し、企業が同意した場合には「半日単位」での付与が可能です。また、労使協定で定めれば「時間単位」での付与も可能となっています。

皆様の企業では付与単位をどのように取り決めていますか?ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が叫ばれる社会経済状況下です。積極的に上記の弾力的付与の導入を検討してみてはいかがでしょう。筆者の顧問先企業でも、効率的な時間管理(有給休暇の取得促進)の一環として導入する事業場が増加しています。

「時間単位」で付与するには「労使協定」が必要!

年休は1日単位が原則ですが、実態を勘案すると、年休を取得する理由によっては1日ではなく数時間(時間単位)でよい場合もありますね。所要で官庁に出かけたり、私的な簡易的用事であればむしろ時間単位付与の方が効率的でしょう。このような時間単位付与制度を導入するには、「労使協定」を結ぶことが必要。無条件で許されているわけではありません。

労使協定とは、導入する事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面協定のことを言います。企業と従業員で時間単位付与制度の導入を合意しておく必要があるのです。

時間単位付与制度を導入したからといって、個々の労働者に時間単位付与が義務づけされるのではありません。日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができる制度なので留意ください。

■次の4事項を労使協定で定め導入します!

(1)時間単位年休の対象労働者の範囲

時間を単位として有給休暇を与える労働者の範囲を決めておきます。正規社員を対象として、パートタイム労働者など非正規社員を除外する場合などはその範囲を明確にしておかないとトラブルの種になります。またそもそも利用目的は労働者の自由であるため、利用目的によって対象労働者の範囲を決めることもできません。

(2)時間単位年休の日数(5日以内)

時間単位付与ができる日数は、5日以内の範囲で定めます。前年度からの繰越しがある場合であっても、当該繰越し分を含めて5日以内です。

(3)時間単位年休1日の時間数

有給休暇1日の時間数は、1日の所定労働時間数を基に定めます。また日によって所定労働時間数が異なる場合は1年間における1日平均所定労働時間数を基に定めます。1日の所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げて計算します(後述規定例参照)。

(4)1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

例えば2時間、3時間といった1時間以外の時間(分単位は不可)を付与単位とすることも可能です。その時間数を決めてください。ただし1日の所定労働時間を上回ることはできないので注意ください。

■時間単位年休の1時間分の賃金額はどう決めるのか?

  1. 平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法第99条第1項に定める標準報酬日額相当額
    (ただし労使協定が必要)

のいずれかの金額をその日の所定労働時間で除した額です。1~3のいずれにするかは、就業規則等に定めることが必要です。

■事業主側には時季変更権があります

時間単位年休も年休には違いありませんから、事業の正常な運営を妨げる場合は使用者による時季変更権が認められます。ただし、日単位での請求を時間単位に変えることや、時間単位での請求を日単位に変えることはできないので要注意です。

次のページでは、時間単位年休の就業規則規定例を紹介しています。

 

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