ライフサイクルコストをどう管理するか?
管理組合をサポートする立場として、この「効率的な資産管理」を担うことが、マンション管理士のミッションです。そのために具体的にすべきことは以下の3つです。
・管理組合の中枢機能である、理事会の運営サポート
・管理委託費、光熱費をはじめとする、維持管理コストの適正化
・大規模修繕工事等を含むライフサイクルコストの低減
今回は、3つ目の「ライフサイクルコストの低減」に関する業務についてご案内します。
経年的に増額を迫られる修繕積立金
マンションを購入すると、毎月管理費等と修繕積立金が徴収されます。管理費は原則として値上げすることは想定されていませんが、修繕積立金は経年的に増額改定することが長期修繕計画に織り込まれているのが一般的です。なぜこのような仕組みになっているのでしょうか?
そもそも、新築時点で30年にわたる長期修繕計画が作成された際に、毎月均等に積み立てるべき金額は把握でき、それを徴収すればよいはずです.。にもかかわらず、新築当初の積立金は、それには到底及ばない水準に設定されているのです。その理由は、マンションを販売する分譲業者側の事情にあります。
つまり、購入者のローンの返済を含むランニングコストをなるべく安く見せれば、マンションを販売しやすくなるので、修繕積立金を故意に低く設定しているのです。
たとえば、国交省の「修繕積立金ガイドライン」によれば、均等積立方式で必要とされる金額は、専有面積1平方メートルあたり月額200円強であるのに対し、新築マンションにおける修繕積立金は、平均90円程度と半分に満たない水準です。したがって、この不足分を解消するには、築30年目までには入居当初の4~5倍まで増額しなければならない計算になります。
したがって、管理組合としては、時の経過とともに、修繕積立金の増額改定の検討や、長期修繕計画の管理が重要なテーマになってくるのです。
大規模修繕工事に潜むリスク
マンションが経年的に老朽化・陳腐化する中、その資産価値をなるべく長期的に維持していくために、適切に修繕や設備の更新等を行えるよう長期修繕計画を作成し、それに沿って修繕積立金の徴収プランを検討することが必要です。問題は、管理組合が、専門知識を要する長期修繕計画の作成や見直しを、事実上管理会社に依存せざるを得ないという実態にあります。
管理会社は、ご承知の通り大規模修繕工事を受注できる立場にあるため、管理組合と利益相反の関係にあるといえます。
つまり、なるべく長期修繕計画に記載された時期と金額のまま自ら工事業務を受注することが管理会社の利益を増やすことになりますし、実際に管理会社もそれを重要なビジネスチャンスとして位置付けています。
しかしながら、計画通りに進めることが、必ずしも管理組合にとってベストな選択とは言えません。管理組合側からすれば、不要不急の工事はなるべく避け、競争原理を取り入れて合理的な金額で発注できるよう努めることが、ライフサイクルコストを低減し、修繕積立金の負担を減らすことになるからです。
次ページでは、管理組合が大規模修繕工事の際に抱える課題と、マンション管理士が果たすべき役割についてご案内します。