現在日本のコンテンポラリー・ダンス界では、Noism出身者の活躍が目立ちます。そうした現状をどう受け止めていますか?
金森>嬉しいけれど、でも自分としては、彼らはもっとできると思っているんです。Noismを辞めていく子たちで、ここまでやった、もうこれが限界だっていう舞踊家はひとりもいない。佐和子ですら限界じゃない。でも、辞めたら当然舞踊家としてのレベルは落ちるんですよね。フリーは活動環境が劣悪だし、みんな食べていくのに必死になるから。もちろん、Noismを辞めて海外のカンパニーに行った子たちは別ですけど。日本でいろんな所に名前が出て活躍してると聞くのは嬉しいことだけど、一方で、その程度で活躍できる日本の舞踊界に愕然とする。例えば“Noismにいた子が外に出たら全然通用しなかった”というくらい日本の舞踊界もレべルがすごく高くて、切磋琢磨していたら、こっちもやり甲斐があるかもしれない。でも辞めていった子たち、しかもトレーニングをしなくなった子たちが活躍できるくらいゆるんでるんじゃどうしようもない。ウチで何年間かやってた舞踊家が、辞めてすぐあちこちで登用されるのは当たり前。そもそも身体にかけてる時間が全然違いますから。
『ZONE ~陽炎 稲妻 水の月』(2010年)
academic / nomadic / psychic 撮影:鹿間隆司
ヨーロッパではチケットも安価で舞台が身近にある反面、舞踊家は数多く舞台に立つことになり、ゆえに舞踊家としての寿命も短い。そういう意味では、現在のNoismは非常に良い環境にあるのでは?
金森>自分もヨーロッパにいたときは年間100回本番で踊ってたけど、あれは本当にキツイし摩耗する。ひとつのプログラムが初演を開けると、ひと月に26回くらい舞台に立つことになる。国内から海外まで、小さな劇場や大きな劇場といろんな場所で踊る。今日は辛いなっていう日もあるけど、それでも舞台に立たなきゃいけない。もちろんそこで学ぶものも沢山ある。ただ、堕落しようと思えばいくらでもできる。質がどうというより、むしろケガをしないで舞台を全うすることが重要になってくるんです。Noismの現在の年間公演数は30数回ですが、もう少し多いといいなと思っています。できれば倍は欲しいですね。ただそのためには舞踊家やスタッフの人数を増やさないといけないし、制作体制ももっと充実させないといけなくなる。今はNoism1と2でそれぞれ年間2プログラムずつつくっていて、その他国内ツアーやレパートリーの海外公演もある。それだけで制作もギリギリ回しているのが現状だから、公演回数を増やすのは今の体制では難しい。ただ、60回できたらジャストではあります。
『ZONE ~陽炎 稲妻 水の月』(2010年)
academic / nomadic / psychic 撮影:鹿間隆司