契約している損害保険に関して相談したいとき、苦情を申し立てたいときに
火災保険や自動車保険など損害保険契約について問題が発生したとき、私たちはどのように解決を図ればよいのでしょうか。契約先の損害保険会社と話し合ったり、それでもうまくいかなければ、裁判に発展する場合があるかもしれません。
もう1つ、話し合いと裁判の間に位置する解決方法があります。それが「ADR(Alternative Dispute Resolution=代替の紛争解決)」、つまり、“裁判外紛争解決手続き”です。
ADRは裁判所での訴訟に代わるあっせん・調停・仲介など、契約者と契約先との合意に基づく解決方法で、専門家である第三者に委任して紛争解決を図ります。訴訟よりも手続きは簡単、費用を低く抑え、速やかな解決をめざします
2009年の金融商品取引法改正で、金融商品利用者保護の充実策として「金融ADR制度」がわが国につくられることになり、それを受けて生損保、銀行、証券などそれぞれの金融業界ごとに金融ADRが設立されました。
損害保険契約のトラブルは「そんぽADRセンター」へ
損害保険に関しては、国の指定を受けた指定紛争解決機関として2010年9月に「そんぽADRセンター」が発足しています。ここでは契約者と損害保険会社との間で起きた相談や苦情、紛争などのトラブルについて、専門家によるアドバイスや解決手続きを、原則無料で受けることができます。またそんぽADRによる手続きに対して、損害保険会社は原則として手続きに応じる義務があります。相談や苦情申し立てを行いたい場合、電話や文書による方法のほか、全国11カ所にある最寄りのそんぽADRセンターに契約者が自ら訪問して、専門の相談員からのアドバイスを受けることができます。
苦情申し立ては、契約者と損保会社の当事者間で話し合いによる解決ができるように支援が行われるもの。ですから、その際に契約者は、そんぽADRセンターに苦情内容を詳細に話すことが必要です。それを受けてそんぽADRセンターは損害保険会社にその内容を伝え、その後契約者と損害保険会社が話し合い、解決を目指します。
これで解決しなければ、場合により紛争解決手続きに入ることになります。紛争解決手続きは、紛争解決委員が当事者の和解あっせんを行うもの。契約者は紛争解決手続きの利用案内を受け、書面で申立書を作成、必要な書類とともにそんぽADRセンターに送付します。書類が受理された後、紛争解決委員が選任されますが、ここで選任される紛争解決委員は、申し立て内容に関し利害関係がない中立・公正な第三者。専門知識・経験を有する弁護士や消費生活相談員や学識経験者などから選ばれます。
契約者は損害保険会社の主張に対して意見を述べ、その後担当から和解案が提示されます。和解案は申し立てを受けた日から原則として4か月以内で、手続きは非公開、プライバシーは守られます。
次のページでは、実際の苦情や対応状況をご紹介します。