東洋医学から考える五月病
東洋医学の世界観では、身体に変調を来す原因はまず内因(ないいん)と外因(がいいん)に二分されます。五月病はこの二つのうち、内因が主に関わっていると考えることができます。内因による病変とは、主に心の状態が過剰となることが原因となり身体、特に内蔵に影響を及ぼしているものと考えられ、喜(き)、怒(ど)、思(し)、憂(ゆう)、悲(ひ)、恐(きょう)、驚(きょう)の七つの感情が原因とされています。五月病の状態では新たな人間関係や仕事に対し思い悩む時間が増えることで思の感情が過剰となっていると考えられます。この思の感情が過剰になると五臓のうち同じく土の属性を持つ脾(ひ)の臓器を傷つけることになります。
脾は食物から得たエネルギーである水穀の精微(すいこくのせいび)を作り出し全身に送る働きを持ちますが、この水穀の精微が全身の恒常性を維持するエネルギーである気(き)の源になっています。これらのことから、脾の機能低下は食物からエネルギーを得られない状態や身体の抵抗力の低下を招く原因となります。
また、思の感情が過剰になることは同時に精神や意識をコントロールする役割を持つ心(しん)を傷つけてしまう原因にもなります。この心は現代でいう心臓と同じものですが、その役割に関しては東洋医学の観点ではやや違うものと捉えられています。
人間の精神活動を統括するのは現代医学では脳であると考えられていますが、東洋医学ではこの心こそが精神活動の中枢であるとされています。そのため、心が傷つくと精神活動が不安定になってしまいます。また心は気とともに水穀の精微から作られる血(けつ)を全身に送り出す働きも担うため、心の不調は全身への栄養供給能力の低下につながります。
これらのことから東洋医学的な観点で五月病を考えると、思の感情の過剰から脾の臓器が傷つけられたことによる気の不足と心の臓器が傷つけられたことにより精神活動が不安定になっている状態と捉えることができます。
こうした状態を改善するためには、脾と心のエネルギーを補うことが大切になります。
■脾のエネルギーを補う足三里
脾のエネルギーを補う足三里
■心のエネルギーを補う神門
心のエネルギーを補う神門
ます。
こうしたツボを利用し、すこしでも症状の改善や予防にお役立ていただければと思います。気分の落ち込みなどがつらい場合や長期にわたる場合などは、必ず医療機関での診察を受けるようにしましょう。