五月病の原因と正体
新しい環境でストレスを感じ、生じる五月病
一般的には五月病などと呼ばれ、新しい環境にうまく適応できず脳の機能が低下してしまっている状態と考えられています。今回はそんな五月病について現代医学と東洋医学の観点から考え、症状の改善に効果が期待できるツボについて解説していきます。
五月病は医療的な正式な病名ではありません。実は正式な定義などがされている訳ではないのです。近年では新しく社会にでる新社会人が研修を終える6月頃に気分の落ち込みを訴えることが多いため、6月病という言葉まで使われています。五月・六月どちらの呼び名でも、共通して言えることは環境に適応しようと努力した結果心身に負担を溜め込み発生するということでしょう。
■ストレスを処理できなくなって発生する適応障害
医学的な視点でこの状態を捉えると、ストレス障害の一種である「適応障害」という精神疾患を挙げることができます。適応障害はなんらかの外的ストレスが加わり続けた結果、ストレスの処理能力の限界を超えて発生する心理的機能不全だと考えられています。
原因となるストレッサーに出会った時に不安感や抑うつ、焦り、過敏性、混乱などの精神症状の他にめまい、震えや吐き気、ストレス性胃炎などの身体的な症状が発生します。そうした症状の結果、仕事に集中できなくなり著しく効率が低下する、勉強する気力が湧かず学業成績が悪化するなど社会生活や学校生活に悪影響が発生します。適応障害は原因となるストレッサーが排除された場合、半年以内に症状が消失すると定義されています。
■ストレスによる脳の変化が原因で発生するうつ病
また、適応障害と似た状態である気分障害も五月病の原因の一つと考えることができます。気分障害は暗く落ち込んだ気分が継続するうつ病性障害と、高揚した気分と落ち込みを繰り返し感じる双極性障害に大別されますが、五月病は主にうつ病性障害、いわゆるうつ病の状態であると考えることができます。
症状としては気分の落ち込みや興味または喜びの消失、食欲の減退や増進、不眠や睡眠過多、精神運動の制止や強い焦燥、疲れやすさ、集中力の低下、自殺への思いなどが挙げられます。また、呼吸の浅さや動悸、頭痛や便秘・下痢など一見内科的疾患のような症状を呈することも多いため、うつ病にかかった多くの方がまず内科を受診することが明らかになっています。
うつ病の場合、現時点では繰り返し加わるストレスにより脳内の伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの分泌量や感受性が低下してしまっている状態と考えられています。
適応障害が環境の変化という明らかな原因を持つことに対し、うつ病の原因は明らかではなく、複合的な要素が組み合わさって発生すると考えられます。原因が脳の機能的な変化にあるので、ストレス要因が除去されただけでは症状が改善しないことも適応障害との大きな違いです。
これらの五月病の正体と考えられる疾患を踏まえ、東洋医学的な観点から五月病を捉え、症状の軽減や予防に役立つと考えられるツボについてご紹介していきます。