共産趣味から見えてくる世界観
音楽ではないですが、「共産趣味」という用語が一部で使われています。Wikipediaによると共産趣味にもいろいろなタイプがあるようで、一括りにする事は難しいですが、社会評論社から「共産趣味インターナショナル」シリーズとして、書籍が刊行されています。お勧め課題図書は、伸井太一著『ニセドイツ(全3部)』とイスクラ著『共産主婦』です。共通するのは、イデオロギーとしての共産主義を語るのではなく、そこにいた人々の暮らしや彼らが使っていた工業製品などを観察・研究していくという主旨です。いつか、僕も『共産テクノ』というタイトルでこのシリーズに著者として加えて欲しいです(笑)! キッチュな東欧雑貨に胸キュン!してしまう(主に)女子も多いようで、そちらの世界にも通じますが、共産趣味からさらに大きな世界観が見えてきます。なお、イスクラさんがやっている東ドイツ趣味ショップ、「DDR Planet」は、尼崎市にあります。共産趣味 (Wikipedia)
ニセドイツ〈1〉 東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2) (amazon.co.jp)
共産主婦―東側諸国のレトロ家庭用品と女性たちの一日 (共産趣味インターナショナル) (amazon.co.jp)
ISKRA
その辺りにもシンパシーを持ちつつも、僕の領域は大変狭いテクノポップ。Kraftwerk、YMOを始め、直接的な共産趣味ではないにしろ、ロシア構成主義的要素を取り入れたジャケなどが多いです。そういう点からも親和性はいいでしょう。しかし、表現の自由が制限されたり、工業製品の調達がより難しい共産主義陣営で、どこまでテクノポップ系のアーティストが発掘できるのか、最初は自分でも半信半疑でした。しかし、僕の結論は、「逆境の中でも、志ある者たちはいる!」という事です。
日本のロシア構成主義展 (All Aboutテクノポップ)
外国のロシア構成主義展 (All Aboutテクノポップ)
第3回ロシア構成主義展 (All Aboutテクノポップ)
ソ連での共産テクノのパイオニア?
今回は、「共産テクノとは何ぞや?」という部分に焦点を当てましたが、フォルム(Форум)以外にも一つ共産テクノなグループを紹介します。チェルナヴスキィ=マテチュキィ・プロジェクト(Чернавский-Матецкий Проджект)です。ユリィ・チェルナヴスキィとウラジミール・マテチュキィによる二人ユニットですが、ユリィはちょうとこの時期、1966年から現在も活動するヴェセルィエ・レブヤータ(Веселые ребята)というロックバンドに在籍していました。1983年に『Банановые острова (バナナ・アイランド)』というアルバムをリリースしています。よって、ジャケもアンディー・ウォーホルを意識したようなバナナ・ジャケ。ソ連に於ける共産テクノの元祖であるという検証はまだ出来ていませんが。フォルムのデビュー作が1984年ですから、パイオニア的存在としていいでしょう。不思議な事に、1995年にオーストリアでCD化されています。ニューウェイヴを意識しつつ、オールドウェイヴ然とした曲も混在していますが、Krafewerkの影響を受けたとしか考えられない「Робот(ロボット)」という曲は、ぜひ聴いて頂きたい。テクノなクリップもちゃんと作っています。Робот (YouTube)
今後、ソ連だけでなく幅広く共産主義陣営からテクノポップを発掘すべく、現在調査をしておりますので、楽しみにしてください。