マネジメント/マネジメントの基礎知識

リスクマネジメント~その2「危険性」のリスク(2ページ目)

リスク管理のその2は、「危険性」のリスクの内容と対応策について前回同様、具体例をまじえて解説します。また、組織におけるリスク管理の3つの段階に分けられるそのプロセスとポイントについても、分かりやすく説明します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

人為的な不慮の事態に関する最近の事例では、マルハニチロの冷凍食品への農薬混入事件が挙げられるでしょう。この事件は、結果悪意ある従業員による犯行と分かりましたが、企業の製造管理、雇用関係などに疑問を抱かせるに十分な事件であり、企業イメージに大きなマイナスとなり業績に多大なる損失を与えたことは間違いありません。マルハニチロの信用力回復に向けては、管理体制の強化や不満分子を生み出さない雇用関係の確立などを早急に実現し、対外的に事件を払拭する印象付けをおこなうことが重要であると言っていいでしょう。

いずれしましても「危険性」のリスクの「不確実性」のリスクとの最大の相違点は、「危険性」のリスクにリスクテークの余地はなく、存在するのはリスクヘッジのみであること。すなわち、不慮の事態発生に備えて、事前の準備や意識によりいかに発生時のリスクを最小化するかこそが重要であり、それにできる限りの努力を払うべきということなのです。

リスクマネジメントは3つのプロセスで管理する

最後にリスクマネジメントのプロセスについて説明します。その流れ
解説

リスクマネジメントは今や組織運営の最重要課題

は、「リスクの認識」→「リスクの分析」→「リスク対応策の検討」の三段階からなります。「リスクの認識」は、企業の運営において考えうるリスクを全て抽出することです。ここで重要なことは、内部要因・外部要因の別を問わず、可能な限り多くのリスクを抽出することです。「リスクの分析」は抽出されたそれぞれのリスクについて、発生頻度、損失の範囲や規模の大きさと概算の損失額を想定します。その上で、発生頻度が多いもの、損失規模の大きいものなどを総合的に勘案して優先順位を決めます。「リスク対応策の検討」はまさに、その優先順位に従って対応コストを配分し対応策を実行していく形となります。

リスクは必ず発生するものではない以上、そこにどれだけのコストをかけるべきかの考え方は非常に難しいと言わざるを得ません。いたずらにコストをかけることがよしとされるわけではなく、人命に関わるもの、組織の存続にかねないものを中心として、全体では最小限のコストに抑えるという考え方を基本として考えていくことが肝要であると思われます。またコンティンジェンシー・プランは完璧なものは存在しえず、リスク顕在化のたびごとに対応上の問題点などを踏まえて見直しを加えていき、よりリスクヘッジ精度の高いものに作り替えていくこともまた重要なのです。

今やリスクの種類を問わず、企業のリスク対応の良否が企業評価に直結する時代になったといっても過言ではありません。その意味からも、リスクマネジメントは企業の組織運営において決して忽せにできない最重要項目であるとの認識のもと、適切な対応が求められているのです。
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