「貴方の好きな動物は何ですか?」
そう問われたら、熱烈なる将棋ファンの私はこう答える。

「もちろん、『馬』と『アナグマ』と『カニ』です」
「馬」はもちろん「角」の成り駒。そして「桂馬」の一字でもある。8種類の将棋駒に書かれた唯一の動物が「馬」なのである。毎日、目にするのだ。好きになるのも自然の成り行きであろう。

穴熊囲い

穴熊囲い

そして「アナグマ」……。
これは、将棋の陣形である「穴熊囲い」からきた答えである。図はその「穴熊囲い」だ。  いかがであろうか、玉がアナグマのように隠れている姿が想像していただけるであろうか。

 
カニ囲い

カニ囲い

さらに「カニ」。これまた「カニ囲い」という守りの陣形からきた答えである。こちらも参考図で紹介しよう。カニの姿が浮かんできませんか? 私が「馬、アナグマ、カニが好きだ」と述べたわけが、おわかりいただけたことと思う。さらに続けよう。

 
「金」魚

「金」魚

「貴方の好きな魚は何ですか?」

この問いに対する答えも、もう、おわかりだろう。
「はい。『金』魚です」
いわずもがな、であろう。我ながら、うっとりするような答えだ。

 


「銀」杏/ぎんなん=イチョウ

「銀」杏/ぎんなん=イチョウ

「貴方の好きな木の実は何ですか?」
「はい、『銀』杏(ぎんなん)です。」

書きながら一人悦にいるガイドであるが、「おいおい、お前の好みはわかったが、いったい何をガイドしたいんだ?」の声が聞こえてきそうである。お待たせしました。いよいよ、本丸の問いである。

「貴方の好きな車は何ですか」

これぞ、今回のポイントとなる問いである。こちらも、将棋ファンならわかっていただけるだろう。

「決まってます。飛車と香車です」
自画自賛したくなるような見事な答えである。ところがである。ところが、2015年2月8日以降、この答えに付け加えができたのである。いわく……。

「決まってます。飛車と香車です。そして、トヨタです」

2015年2月8日は記念すべき日となった。今回は、私の答えを変更せしめたその日の出来事についてガイドしたい。

驚愕の将棋イベント

その日、ある驚愕のイベントが行われた。羽生善治(過去記事)四冠と豊島将之七段の対局である。将棋界のスーパースターと世代交代の旗手の戦いだ。ファン垂涎の対局である。

しかし、「なあんだ、たしかにすごい戦いになるだろうけれど、驚愕のイベントは言い過ぎなんじゃないか」……これまた、そんな声が聞こえてきそうである。だが、これが尋常ではない対局だったのだ。どこが、どう驚愕であったか。一言でお答えしよう。巨大だったのである。

進撃の巨人も真っ青の「巨盤」

進撃の巨人も真っ青

進撃の巨人も真っ青

まず、将棋盤の巨大さを紹介しよう。なんと通常盤の1万4835個分の面積を有するという、『進撃の巨人(過去記事)』も真っ青の巨盤が使用されたのだ。

そんな巨盤を置く場所なんてあるの?あったのである。巨盤は広々とした野球場、西武ドームに設置されたのだ。なんたるスケール。もちろん駒だって、それに見合う大きさである。

その名も『リアル車将棋』

ミニカーで再現した「車将棋」

ミニカーで再現した「車将棋」

「ちょっと待って、そんな巨駒を、あの華奢(きゃしゃ)な羽生さんや豊島さんが動かせるの?」

もちろん無理である。じゃあ、誰が動かすのか。答えは車である。巨盤の上を走り回る車の天井に巨駒が乗せられていたのだ。総勢40台の自動車がドーム狭しと走り回る。その壮大さを想像していただけるだろうか。現場を観ることができなかった私は、その気分だけでも味わおうと、ミニカーでやってみた。私にできることはこの程度である。しょぼいが画像をご覧いただき、本物を想像いただきたい。

この『リアル車将棋』を企画したのは『ニコニコ生放送』で『電王戦(過去記事)』を運営するドワンゴ。そして、活躍した自動車は、すべてトヨタが提供した車だったのである。題して「電王戦 X TOYOTA 『リアル車将棋』」である。

なぜ、横綱トヨタが、突拍子もないこの企画に……

トヨタから提供された車を一部紹介しよう。駒となったのは、いわゆる名車の数々であった。「トヨペットクラウン」、「カローラレビン」、「MR-S」、「初代ヴィッツ」などである。いずれも、世界に愛された車たちだ。トヨタが自動車産業の横綱となっていったプロセスそのものの車たちである。ここで、疑問がわかないだろうか。はっきり言おう。この企画は突拍子もないものである。

同じようなイベントで山形県天童市には、いくさ支度をした人間が将棋駒となって戦う「人間将棋」がある。だが、これは、歴史のあるお祭りであるし、なにより天童市は日本一の将棋駒の産地なのだ。つまり、その意義がはっきりしているのである。

誤解しないでいただきたいのだが、この突拍子のなさが、私には魅力なのである。だが、横綱トヨタがこの企画に乗る意味がよくわからない。こんなことをしなくても、横綱らしくドーンとしていればいいのではないか。そんな疑問がわいてきたのである。