将棋/将棋マンガレビュー

「進撃の巨人」に潜む「将棋」

大人気SFアクション漫画「進撃の巨人」。その圧倒的な筆力とストーリー展開に度肝を抜かれた方も多いだろう。実は、この作品には「将棋」が潜んでいる。そして作者の諫山創は将棋が好きである。ガイドはそう見ている。ちなみに諫山は同じ漫画家の皆川亮二とタッグを組み、将棋漫画「the Killing Pawn」を発表するそうだ。今回は、ガイドなりの「進撃の巨人」観をお読みいただきたい

有田 英樹

執筆者:有田 英樹

将棋ガイド

「進撃の巨人」には将棋が潜んでいる

「進撃の巨人」には将棋が潜んでいる

漫画「進撃の巨人」には「将棋」が潜んでいる。かたや架空世界を舞台にしたSFアクション漫画であり、一方は我が国古来の伝統文化競技である。動と静、水と油、一見真逆のものである。しかし、この二つにはイコールで結ばれる部分がたくさんあるのだ。

作者である諫山創が意識しているかどうかは不明だし、あるいは否定するやもしれぬが、諫山の創作脳の中に将棋が潜んでいたとガイドは見る。そして、きっと諫山は将棋が好きである。そのことが、2014年8月6日に証明される。

「進撃の巨人」の概要

 

大人気の本作品であるが、知らない方もいるはずだ。ぜひお読みいただくか、アニメで視聴していただきたいのだが、そんな時間がないという方のために、知っておいていただきたい知識をまとめておく。

(1)正体不明の巨人達が人間を襲ってくる
(2)人間達は高い壁に守られた内側で生活している
(3)壁の外に出て巨人達に戦いを挑む兵士達もいる

この3つさえ知っていていただければ、以下のガイド記事を読んでいただく際に支障はない。

迫り来る恐怖という共通点

迫り来る恐怖の成駒達

迫り来る恐怖の成駒達

将棋を指したことがある方なら、同意してくれるであろう。対局での一番の恐怖は「龍」や「馬」そして、いろんな成駒達が自分の王将に迫り来る状態である。一例を画像にしてみた。いかがであろうか、この局面。まさしく大ピンチ。到底勝ち目のない様相を呈している。足音が聞こえるかのように迫り来る敵駒達。その恐怖心と戦うのが将棋なのだ。

 

この恐怖の成駒こそ、巨人そのものなのである。ちょっと待て、だったら、ウルトラマンや仮面ライダーに出てくる怪獣や怪人だって同じじゃないか。そうお考えの方もいるだろう。しかし…。しかし、それはちょっと違うのだ。ガイドの考えに耳を貸して、いや、目を貸していただきたい

巨人に潜む共通点

ウルトラマンに登場する怪獣は基本的に一人(一体あるいは一匹というべきか)である。だが成駒は違う。複数で襲いかかり、どんどん増殖していく。だから、本質的に孤独な怪獣とは違うのだ。じゃあ、ショッカーの戦闘員じゃないか。たしかに、彼らは集団でライダーを襲う。増殖もする。しかし、これまた本質の面で成駒と違う。説明させていただきたい。

成駒には大きく分けると2つの種類がある。元々の自身の動きに王将の動きを獲得して変身したもの(「龍」と「馬」)、そして、もう1種類は自身の動きにかかわらず金将の動きへと変化したもの(「と」「成香」「成桂」「成銀」)である。そして、それぞれの成駒は元々の生い立ちが違うのである。すべてが同一、換言すれば没個性のショッカー戦闘員とは、この点において、まったく違うのだ。そして、「進撃の巨人」には成駒同様に2種類の巨人が登場する。


いわく「通常種」「奇行種」である。そして、それぞれの種族の中にもたとえば女型や超大型という個性があるのだ。これも成駒と同じである。怪獣やショッカー戦闘員にはない集団制と個性という共通点が「巨人」と「成駒」の間に存在しているのである。そして、これだけでは終わらない。

ヒーローに潜む共通点

この局面でのヒーローは

この局面でのヒーローは

実は、ヒーローも同様だ。ウルトラマンやライダーは圧倒的な力を持ったヒーローだ。だが、それは将棋の世界とは相容れない。たとえば、右の局面をご覧いただこう。

がちがちに王を固めてきた相手。最も攻める力が強い駒「龍」や「馬」があっても、この局面では相手玉を詰ますことはできない。「金」でも「銀」でも不可能だ。だが「桂」ならば、ぽかりと空いた「2三」に打ち込むことにより勝利をもぎ取ることができる。

将棋は局面によってヒーローが変わる集団競技だ。この点でウルトラマンやライダーとは大きく異なり、しかしながら、「進撃の巨人」と共通しているのだ。本作品では、攻めも守りも兵団単位で行われ、それぞれの兵団に属する個性豊かな兵員達がそれぞれの特徴を持って活動している。まさしく将棋方式なのである。じゃあ、チェスと言っても良いじゃないか。この点についても説明しよう。
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