受験者からよく相談を受ける内容です。書店に行って立ち読みすると、どちらも似たように見えるので、つい「予想」という言葉に魅力を感じてそちらを買いたくなるものです。実は、これらは並列的にどちらかを選ぶというものではありません。それぞれ目的が異なりますし、活用する段階も異なってきます。
間違った学習方法で合格が遠のかないように、この記事では過去問の解き方とテキストの選び方について解説します。
なぜ宅建の過去問を解いているのに不合格なのか?を考えてみる
宅建試験問題の約70%程度は過去に出題されたところから出ています。もちろん、まるっきり同じ問題ではありません。同じ分野(条文)から出題されているという意味です。ですから、理屈の上では、その部分をしっかりと理解して覚えていれば合格ラインは十分クリアーでき、宅建試験に合格することができるということになります。ただ、過去問を漫然と解いているだけでは、あまりの量に先が見えなくなるばかりか、一通り解き終わるころには始めにやった問題をすっかり忘れているという悲しい結果を招くことも。
やってはいけない過去問演習をラインナップすると、
- 出題年度ごとに演習する
- 一通り解いてから最初に戻って1回目の演習をしている
- 全部の選択肢の内容を理解して暗記しようとする
- はじめから問題を解こうと悩んで考える
- 予想問題集だけを解いている
【解決方法】
1.分野ごとに演習を繰り返しましょう
たとえば民法なら、意思表示、代理、条件期限……という項目で順番に過去問が並んでいるはずです。それを意思表示の問題だけを3回繰り返し演習し、次に代理の問題だけを3回繰り返し演習し……というように、宅建の過去問集全部を一気に解くのではなく、分野ごとに細切れに解くのです。
3回目ともなれば問題を覚えてしまうかもしれませんが、それでいいのです。覚えてしまうくらいでいいのです。そして、3回連続で正解した問題を"マスターした問題"として印を付けて、全部の問題をその状態にして行くように演習を繰り返します。
2.重要でない選択肢は解説を一読する程度にしておく
宅建試験は競争試験です。毎年、不動産業界の要望等を考慮して、合格者数がある程度決まっています。つまり、満点が続出するような問題ではこの要望に応えることができなくなるので、60~70%程度の正解で合格できるように、解けない問題も作られています。
ですから、過去問を解きながらも、どの問題が解けなくてもよい問題で、どの選択肢がわからなくてもよい選択肢なのかを取捨選択して、重要度の高いものから理解して覚えるようにしましょう。
したがって、過去問集は問題ごとの重要度ランキングだけでなく、選択肢ごとの重要度ランキングのあるものを選びましょう。
3.1回目は解かないで解説をすぐに読む
はじめて過去問を解いてみるとどうしても時間がかかるものです。新しい法律知識を学んだ後に問題を解くのは楽しいものなのですが、じっくり考えて問題を解いているとあっという間に月日が経ち、とても試験に間に合わなくなります。
ですから、1回目の演習は、問題を読んだらすぐに解説を読むようにしましょう。その際、誤りの選択肢の場合は、なぜ誤りなのかをちゃんと理解してから次の選択肢の解説を読みましょう。
2回目以降の演習から問題を解きましょう。ただ、宅建試験は2時間で50問解かなければならないので、1問にかけられる時間は約2分半です。それ以上は学習段階でも時間をかけてはいけません。
とにかく限られた時間で効率よく出題範囲を網羅するには、スピーディーに過去10年分くらいの問題を3回転させる必要があります。
4.過去問は知識の整理、予想問題は弱点発見と新傾向の把握
過去問をある程度学習するとここ数年の問題が明らかに難しくなっていることに気が付くはずです。過去問演習だけで本当に合格できるのか不安になると思います。
たしかに、過去問だけを暗記していても合格できません。過去問演習を通じて得た法律知識を異なる事案で活用できる能力と、関連知識があればまず間違いなく合格できます。
この力を付けるために役立つアイテムが予想問題集です。過去問にはない新傾向の問題や新たな事案に向き合うことで、過去問演習で得た知識をさらにブラッシュアップして行けます。ただ、活用する時期は本試験の2~3カ月前あたりがベターです。あまり早い時期に予想問題に触れるとあまりの難しさに自信をなくしたりしますので、まずは過去問演習から始めて下さい。
自分にあったテキストを使用していないと不合格になる?
どんなに一生懸命に勉強しても、使用するテキストが今の自分に合っていなければ合格は遠ざかります。「えっ!テキストに合うとか合わないとかがあるの?」と驚く方もいるかもしれません。市販されているテキストの場合、どのような受験者をターゲットにして書いているのかで、その内容がかなり異なります。次のようなものがあります。
- 出題範囲をすべて網羅するテキスト
- よく出題されているところだけをまとめたテキスト
- 講義を受けることを前提としたテキスト
- 実務でも使用できる条文に忠実なテキスト
【解決方法】
1.法律の知識ゼロから早い段階で学習される方の場合
出題範囲をすべて網羅するテキストと過去問集を購入しておきましょう。特にテキストはあまり薄すぎるのを選ばず、それよりもしっかりと説明がされていているもので、かつ、図や表でわかりやすく解説されているものがベストです。想像以上に法律用語や法理論は初学者に厄介だからです。しっかりと法律用語と法理論が書かれているものが最後には役立ちます。
2.ある程度法律の知識があり、直前期に頻出分野をまとめたい方の場合
よく出題されているところだけをまとめたテキストや、講義を受けることを前提としたテキストがよいでしょう。ある程度理解が進んでいる場合は、長々と具体例をあげての説明書きは不要だったりします。出題されるポイントを箇条書きや図表で整理しているテキストのほうが書き込みもしやすく便利でしょう。講義を前提としたテキストは説明が少ないのが特徴です。
ただし、ある程度理解が進んでいるかどうかの判断は慎重に! 本当は間違えて理解していたり覚えていたりするのに、正しいと思い込んでいる場合があるからです。
3.一通り学習して過去問も3回転したが、なかなか点数が上がらない方の場合
実務でも使用できる条文に忠実なテキストを活用するのもよいでしょう。もちろん、この手の本は試験に合格することを前提に書かれていないので、これだけで合格するのは困難です。受験用のテキストと併用しましょう。苦手意識をもっている分野を中心に一読すると、目からウロコが落ちることも多いと思います。どんな制度も判例も、その根拠は法律の条文にあるからです。ある程度学習が進むと、条文を一度読んでみることで理解が進み正確な知識をマスターできたりします。
ただ、全科目についてこの方法が当てはまるわけではありません。法律によっては準用が多くて受験生レベルではとても歯が立たないものもあるので注意が必要です。