結婚を決めた理由
——去年の11月に結婚式を挙げたわけですが、それはどういう経緯で挙げることになったんですか?あいけん「3年前、勤務している会社が結婚祝い金を同性パートナーや事実婚の夫婦にも支給するように制度が変わったんです。それで、2年前、タイの旅行中、結婚祝い金の申請書を差し出して『よかったら、結婚してくれませんか?』とプロポーズしたんです。それで、受け入れてくれて、書類にサインしてもらって、会社に申請して。国内の同性パートナーで申請第2号だった。結婚祝い金をもらって、会社的には既婚という形になった。それだったら、親とか友達を呼んで、きちんとした形で結婚式をやろうと」
——会社で結婚祝い金を支給っていうのは2012年のTSSAで受賞したときに聞いてスゴイと思いました。会社の中にダイバーシティ委員会があって、とか。そういうところにも関わってたり?
あいけん「会社にダイバーシティの6つの委員会があって、その中にLGBTがある。そこで活動もしてます。結婚祝い金の同性パートナーへの適用は、人事の方が会社の制度改革だけでできることはないかと検討を重ねた結果、実現してくれた」
——ということは、職場でカミングアウトもしているんですか?
あいけん「職場では上司にしか言ってなくて、同じチームの人には言ってなかったんです。でも、結婚を機に、会社の人も繋がっているFacebookでオープンにしました。特に自分からオープンにするわけではありませんが、もし聞かれた場合は正直に答えたいと思うようになりました」
brass「でも、案外結婚指輪をしているのに誰も聞いてくれなかったり」
あいけん「以前、会社の飲み会で『結婚してこそ一人前だぞ』みたいに言ってた先輩が、Facebookでオープンにしてから駅でバッタリ会った時に『結婚おめでとう!』って言ってくれて、うれしかったです」
「初めての共同作業」ケーキ入刀です。笑顔がこぼれます。
あいけん「大学2年のときに母親にカミングアウトしました。そのあと、妹と父に話をしたので、今では家族全員知っています。brassさんの方はしていませんでした」
brass「会社の結婚祝い金の申請をした直後に、親には言いに行こうと思って、実家に二人でいっしょに行って。もぞもぞしながら何とか伝えて」
——そのときが初対面?
brass「以前一緒に実家に帰った時に会ったりしてた。そのときは同居してる友達だと紹介したけど、実は、友達ではなくておつきあいしてると、今回伝えて」
あいけん「帰らなきゃいけない5分前に」
brass「母親がいつも以上にしゃべってて、話を切り出すスキがなく。新幹線の時間も迫ってたので、あと5分というところで切り出しました」
あいけん「その一部始終を実況ツイートとかして。brassさんがまだ言わない、とか」
brass「ひどいよね(笑)」
——(笑)お母さんの反応は?
brass「意外と『なんとなくそんな感じかと思ってた』って。受け容れてくれた。父はちょっと離れたところに座っていたんですが、無言で。いつも寡黙な父なので」
——でもご両親そろって結婚式に参列してくださったんですよね。
brass「なかなかすんなりはいかなかった。最初は結婚式のことは言ってなくて、まずは両家顔合わせをしましょうと。うちの実家は宮城なんですけど、あいけんの家族に宮城に来てもらって顔合わせをしました。それから1ヵ月して、お互いの両親や友人含めてきちんと挙式披露宴をしたいという気持ちが高まり、それぞれの両親に結婚式をしたいと伝えて。母親は両方とも『いいよ』って言ってくれたんですが、父親がそろって難色を示して…」
——お父さんはなぜ?
あいけん「『姓が途絶えてしまうのは…』とか『孫の顔が見れないのは辛い』って。『brassさんとの関係は理解はしてるけど、結婚式は出ない』と言われて。もともとあまり父親との関係がよくなかったのもあって、父親の意見に反論したりすることは諦めていて。でも、結婚式だけは、自分の人生で特別なものだし、やっぱり両親とも参列してほしいし、自分達の想いを見てほしいと思って、父を一生懸命説得したんです。泣きながら」
brass「居酒屋で」
——ドラマチック!
あいけん「そうしたら、父親も『わかった』と言って、参列してくれることになった。そしたら、brassさんの父親も『先方が参列するなら、参列する』と。それで両家揃うことになりました。その後、親戚にも徐々にカミングアウトしていって。結果、自分の親族はほとんど参列してくれることになりました」
brass「うちの方は、まだカミングアウトしてから日も浅かったので、親戚までは参列しなかったんですが」
——いろいろ大変だったんですね…。