フレンチ/東京のビストロ

サンジャン・ピエドポー(渋谷)

ピレネーの麓にある小さな村の名前を冠したバスク地方専門のビストロ。現地で修行を重ねた和田直己シェフが繰り出す郷土色豊かな料理は地元のワインにぜひ合わせたい。程よい満腹感と心地良い酔い加減で明日からのエネルギーが湧いてくる。フランス料理の奥深さが楽しめる秀逸なビストロ、サンジャン・ピエドポー。冷えたこの時期、暖かくなる一軒だ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

バスク地方料理専門店

フランスの食材の宝庫とも言われるランドやバスク地方の料理店ハシリといえば、赤坂のコムアラメゾンだろう。10数年前の開店当時は「どこの国の料理?」と見向きもされなかった小さなレストランはいつしか料理人が集る店として有名となる。休みなく真摯に料理に向き合う涌井シェフの影響を受けた若いシェフ達は気が付くと自らの店を持つようになっていった。
渋谷

新築のビルの2階。看板も手作感たっぷり。

その一つが渋谷は明治通り沿いにあるサンジャン・ピエドポー。フランスはピレネー山脈麓の小さな町、サンジャン・ピエドポーのレストランで修行を積み、渋谷アバスクの料理長を経て2013年3月に自らの店を持つに至る。発音もしづらく、日本ではほぼ無名の町の名前を付けるところに自らが料理を学んでいた土地への敬意を表しているのだろうか。
サンジャンピエドポー

メニューのほかに黒板にもサゼスチョンがある。

これ以上ないシンプルな内装だけに料理だけが目立つ。トリッパの煮込み、タコのイカスミ煮込、鱈のクロケットなどおつまみ系の黒板料理も充実。丁寧に仕込まれ、味わいはストレートで自信に満ち溢れたものばかりだ。ワインとともに料理はすすむのなんの、のん兵衛にはたまらない前菜だ。そして落ち着いたところでアラカルトで、豚肉を中心としたメインディッシュに突き進む。
サンジャンピエドポー

牡蠣と茸のグラタン仕立て。強烈な旨味が襲ってくる。

赤ワインはマディランかカオール、もしくはボルドーか。ここではブルゴーニュは似合わない。お洒落にシャンパーニュ、でもない。5000円前後で良質なものが揃い、ボトルでガンガン飲んでも財布の中身を気にすることはないだろう。

バスクのキントア豚のブレゼは「これは豚?」なのか、と疑うほどの柔らかさに驚く。見た感じは牛頬の赤ワイン煮込だが、膨らんでくるのはキントア豚の甘みと赤ワインの香り。そしてそれをマディランの赤ワインがゆるりと流す。アラカルトで3000円ほどのメニューだが、バスク豚の仕入値段を考えると妥当ではある。
バスク地方

ひと味違うトリッパの煮込


どっかん、と出てくる料理ではないのだが、ここの料理にはエネルギー、つまり力強さがあり、食べ進むに連れ、身体の免疫力が上がっていく気がする。シェフとの会話も楽しく、その目を見れば「旨い料理を作る真面目な料理人」であることがわかるはずだ。聞くとご実家はお肉やさんとのこと。
渋谷

とろけるバスクのキントア豚のブレゼ

小さなカウンターがあり、好みもあるだろうが私はオススメ。

次はお腹空かせた呑み助6人位で「料理全部!」なんて楽しいだろうなあ、と思いつつ、心地良く階段を降りて、バスク地方から東京の現実に戻った。

サンジャン・ピエドポー
東京都渋谷区東1-27-5 シンエイ東ビル 2F
03-6427-1344
地図
JR・東京メトロ渋谷駅から徒歩10分
JR渋谷駅新南口から徒歩5分
11:45~14:00(L.O.13:30)
18:00~24:00(L.O.23:30)
日休
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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