住みたい街 首都圏/住みたい街の見つけ方

この街に住みたい!「東急東横線」全駅ガイド

全国的に知られた街も多い人気の沿線、東急東横線。なんとなく知っている、住んでみたいという人向けに各駅の雰囲気をざっくりお伝えします。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

渋谷
2026年まで工事が続き、大きな変化に期待

ヒカリエ

2012年に東口に開業したヒカリエ。地下に東京メトロ副都心線、東急東横線の渋谷駅がある(クリックで拡大)

新宿、池袋と並ぶ首都圏の一大ターミナル渋谷。JR山手線、埼京線に東京メトロ銀座線、同半蔵門線、京王井の頭線、東急東横線、同田園都市線が交差し、国道246号も走る足回りの利便性から、百貨店、家電量販店から様々な業種の店舗、飲食店が並ぶ首都圏有数の繁華街でもあります。

 
地名が示す通り、駅は谷の底にあり、そこから松濤、神山町、桜丘町、南平台といったお屋敷街までは商業エリアとなっており、住宅として考えられるのはところどころに残された古いアパート。ただ、そうした住宅の多くは商業的な利用をされていることが多く、よほど時間をかけて探さないと、渋谷のど真ん中に住むのは難しそう。多少、物件があるのは桜丘町、鶯谷町あたり。言うまでもないことですが、高台のお屋敷も含め、賃料はどこも高めです。

 

工事中の渋谷駅

工事が進む渋谷駅東口。写真中央左側に掘り下げられた部分は渋谷川。移設の後、工事するという(クリックで拡大)

ところで、渋谷といえば少し前まで東京メトロ副都心線、東急東横線地下化で工事が続いていましたが、現在も2026年度を目指して駅周辺のビルの建設、東京メトロ銀座線、埼京線ホームなどの移設などの工事が行われています。将来的にはJR、国道246号を中心に高層ビルが5棟建設され、渋谷川の整備なども行われるとか。長期に渡って工事が続く不便さはありますが、渋谷駅周辺はもちろん、渋谷をターミナルとする沿線の価値向上につながると思うと、我慢しなくてはいけないのかもしれません。

 
渋谷についての記事はこちら。
渋谷、高低差が生んだ、2つの顔を持つ繁華街

代官山
若い女性の街から男性、シニアも集まる街へ

ヒルサイドテラス

代官山のシンボルとも言える旧山手通り沿いのヒルサイドテラスの景観と調和したたたずまい(クリックで拡大)

低地の渋谷駅の隣は高台にある街、代官山。雰囲気のある店やレストランなどが多く集まっており、特に女性には絶大な人気があり、女性誌に頻繁に登場する街のひとつでもあります。

 
代官山蔦屋書店

単なる書店ではなく、新しい文化、教養の発信地として捉える人もいる代官山蔦屋書店。イベントなども多数開かれている(クリックで拡大)

ファッションの街として知られてきた代官山が変化し始めたのは2011年12月に代官山代官山T-SITE内に代官山蔦屋書店がオープンして以降。ここは単なる書店ではなく、書籍にDVD、ビデオ、文具などを販売、レンタルするとともに、カフェ併設、料理やモノづくりなども含めた幅広いイベントを開催するなど、知的好奇心を刺激する空間。置かれている書籍、開かれるイベントには文化、建築、デザイン、社会などを考えるきっかけとなるようなものが多く、それがこれまでの代官山に来ていた人より年代の高い人たちやビジネスマン、クリエイターと呼ばれる人たちを惹きつけ、街の雰囲気を変えつつあります。

 

住宅という意味では渋谷寄りのエリアでいくつか小規模な物件の供給はあるものの、バブル期以降眠っている土地などもあり、供給の豊富なエリアではありません。分譲では現在、駅近くの、奈良県職員宿舎のあった土地で120戸という、この地域では比較的大きめのマンションが2年後の竣工を目指して工事中ですが、目立つのはそのくらいでしょうか。賃貸ではハイグレードから古い木造アパートまで幅広く揃いますが、渋谷同様、手頃な物件は商業利用も多く、なかなか普通の人が借りるのは難しいようです。

代官山についての記事はこちら。
代官山、都心隣接、しゃれた風情の丘の街

中目黒
桜で有名な目黒川沿い、高台で価格差の大きな街

商店街とタワー

長く続く中目黒銀座商店街から再開発で生まれた目黒川沿いのタワーを望む。目黒銀座は庶民的な雰囲気もある商店街(クリックで拡大)

ここ数年で全国区レベルの認知度を獲得した街、中目黒。渋谷から2駅、東京メトロ日比谷線の始発駅でもあり、山手通り、駒沢通りも近いというロケーションに加え、目黒川沿いの桜、しゃれたショップ、レストランのイメージが人気を博しているのです。川沿いだけではなく、山手通り沿いや東横線と並行する通りには商店街が広がり、庶民的な雰囲気もあります。駒沢通り沿いには家具や照明器具などを扱う店が増え、第二の目黒通りと呼ぶ人もいるようです。

 
また、区役所、保健所を始め、図書館、郵便局などといった公共施設が集中しているのも生活するには便利です。

目黒川の桜

桜の季節になると身動きできないほどの人が押し寄せるようになった目黒川(クリックで拡大)

住宅は目黒川、駅周辺の低地と、代官山方面、祐天寺方面へ向かう高台で分けて考えるのが現実的。駅周辺などは利便性重視の単身あるいはカップル向けの間取りが多く、古いアパートなども多少は残っています。一方、高台は一戸建てや高額な物件が中心になります。ただ、このエリアは高低差のある場所のため、一部には細い坂道、階段があり、そうした場所は高台でも安め。地形によって価格差が出る場所というわけです。

 
中目黒の記事はこちら。
中目黒、通勤に遊びに便利。今一番勢いのある街

祐天寺
各駅しか止まらない、都内ののんびり駅

祐天寺

地元では有名な桜の名所、祐天寺。広い境内には歴史を語る建物が点在(クリックで拡大)

急行停車駅であり、賑やかな商店街のある中目黒、学芸大学に挟まれた、各駅停車しか止まらない駅、祐天寺は駅のすぐ脇に平屋の一戸建てや、石灯籠が並ぶ造園会社があり、銭湯も多いなど、のんびりした雰囲気があります。駅名の通り、古刹で桜の名所でもある祐天寺がありますが、それ以外の名物といえば、もつ焼き屋さんに電車が運んでくるカレー屋さん程度でしょうか。他の駅に比べると地味な雰囲気があります。

 

祐天寺駅前

目黒と三軒茶屋をバス路線のちょうど真ん中に位置する祐天寺。両駅へは早ければ10数分(クリックで拡大)

ただ、目黒から三軒茶屋をつなぐバス路線の中間に位置し、この駅を最寄りとするエリアは意外に広く、世田谷区、目黒区の区境に近いエリアなど、駅から遠い分、賃料の安めな物件も点在しています。駅周辺は中目黒、恵比寿などの価格上昇に伴って移転してきた店などが増え、こちらはそこそこの賃料。早くから開発自体は進んだ街のため、分譲物件は何年かに一度と希少です。

 

祐天寺商店街

お隣の中目黒、学芸大学に比すると、かなりコンパクトな商店街(クリックで拡大)

商店街もこじんまり、あまり繁華とは言えない祐天寺ですが、それでも駒沢通り沿い以遠などに住宅が増えたせいか、多少、新しい雰囲気の飲食店も増えており、以前よりは若い人にも住みやすくなっています。

 
祐天寺の記事はこちら。
祐天寺、古刹と銭湯、一戸建ての多い住宅街
知られざるもつ焼き天国、祐天寺(東急東横線)

学芸大学
活気ある商店街と静かな住宅街が隣り合う

学大の商店街

個性的な個人商店が多いのが学芸大学の商店街の特徴(クリックで拡大)

駅の東西に商店街が伸び、活気のある街、学芸大学。目黒通り、駒沢通りといった幹線道路から少し入っているため、大型店が入り込む余地がなく、個人商店中心という状況が幸いして、個性的な店が多いのが特徴です。また、祝日を除いてあるいは遅くまで診療しているクリニックがかなりの数があり、それに呼応してドラッグストア、薬局も多く、子ども、高齢者のいる家庭には安心して住める街です。

 

碑文谷の桜

碑文谷の住宅街では通り沿いの桜並木が有名。トンネル上になり、歩いているだけで幸せな気分になれる(クリックで拡大)

駅から東西に走る目黒通り、駒沢通りを越したエリアは駅周辺とは一変、静かな住宅街。西側の世田谷区下馬、東側の目黒区碑文谷ともに低層マンション、一戸建てが中心で、いずれもブランド力のある住宅地。特に碑文谷側は桜並木も有名で、文化人、著名人などの居住も多いとか。駅からは多少距離はありますが、それ以上に住環境が魅力のエリアなのです。

 

ことに2014年以降は碑文谷エリアでのマンション供給が増加する予定で、すでに建設中の物件もいくつか。1棟ずつはさほど規模の大きなものではありませんが、複数棟の予定があり、これまで供給の少なかった地域であることを考えると、狙い目の年と言えそう。ただし、価格は数千万円以上からになります。

学芸大学の記事はこちら。
学芸大学は元気、でも静かな住宅の街

都立大学
桜並木のある緑道が瀟洒な雰囲気を醸し出す

都立大学駅前

考えてみると、都立大学に限らず、東横線沿線では駅前にロータリーなどのスペースがない駅が少なくない(クリックで拡大)

駅前を東西に道路が走っていることもあり、都立大学駅前は他の駅に比べると、かなりコンパクトな印象があります。また、その道路と並行して桜並木がきれいな呑川緑道が伸び、さらに駅周辺には田谷区上馬付近から柿の木坂を経て流れる柿の木坂支流、駒沢オリンピック公園付近を起点とする駒沢支流と、この街にはあちこちに緑の散歩道があります。ところどころにベンチなども置かれた緑道はここに暮らす人の憩いの場。都心近くながら、のんびりした空気が流れます。

 

緑道

緑が丘駅まで続く緑道。ところどころにベンチが置かれ、周囲は静かな住宅街(クリックで拡大)

呑川緑道は東側、緑が丘駅まで続いており、両側は静かな住宅街。駅からは多少遠くなりますが、環境を求めるならうってつけの場所です。ただし、駅前にはこじんまりした商店街があるものの、このエリアにはコンビニなどもなく、本当に住宅オンリーの場所。単身者、忙しいカップるにはやや住みにくい場所かもしれません。といっても住宅価格は決して安くはなく、瀟洒な街のイメージだけのものがあります。

 

めぐろ区民キャンパス

めぐろ区民キャンパス。周辺は老舗の和菓子屋さんなどが点在する一戸建て中心の住宅地(クリックで拡大)

駅から離れ、目黒通りを渡った西側、柿の木坂、八雲は高台となっており、一戸建てを中心とした静かな住宅街。大きな区画も多く、初期のクラシカルなマンションなども残されています。かつて都立大学があった場所には公園、ホール、図書館などのあるめぐろ区民キャンパスになっており、各種イベントで賑わいます。

 
都立大学の記事はこちら。
都立大学、緑道と坂、高台の連なる住宅街

自由が丘
商店街ががんばる人気の街では古い物件も人気

自由が丘緑道

両側にブティックや飲食店、カフェが並ぶ緑道沿い。ベンチで語らう人の姿も多い(クリックで拡大)

女性に人気の街、自由が丘。商店街が頑張る街としても知られており、商店街が発行する新聞はもう40年以上の歴史があるとか。充実したオフィシャルサイトに、街の案内所があったりと訪れる人に対して徹底的に親切なのも特徴です。最大規模を誇る10月の女神祭り以外にも街の商店街が一致団結して行う四季を通じた様々なイベントがあり、いつ訪れても新しい発見があります。

 

自由が丘駅前

単なる通過点ではなく、人が集まる場所にというコンセプトで作られた駅前広場(クリックで拡大)

また、イベント以外でもミツバチを飼ったり、自由が丘光Wi-Fiシティー計画を推進するなど、新しい取り組みもいろいろ。2011年には駅前広場が整備され、人が集える場所に生まれ変わったなど、見てすぐに分かる変化もあります。

 
一方で変わらないのが住宅事情。何年も続いて人気の街、住みたい街ランキング上位を占めてきた街ですから、古くても、駅から遠くてもニーズがあり、今も供給の中心になっているのは、古い物件。東急東横線全体としても新築マンションの供給は少ないのですが、その中でも極めて少ないのがこの駅。中古マンションでは築40年以上も多く、この街に住みたいのであれば、築年、駅からの距離については妥協も必要でしょう。もちろん、価格もそれなりです。

自由が丘の記事はこちら。
自由ヶ丘は人に自然に優しい便利な街

田園調布
全国的に知名度ナンバーワンのお屋敷街

田園調布駅舎

地下化にあたっても保存、復元されたかつての駅舎。この街の理想が掲げられている場所でもある(クリックで拡大)

実際の規模は関西の芦屋その他に劣るとしても、お屋敷街としての知名度では日本一知られた街、それが田園調布です。駅西側に広がる住宅街は放射状に広がる街路、並木の美しさで有名ですが、住むという観点で考えると、それが街が作られた当初から変わっていないという点が重要です。他の多くの街では相続などで土地が切り売りされ、当初とは異なる姿に変化していますが、ここではこの街を愛し、伝えようという人たちの意思が強く、多少はあるとしても大きな変化を防いできたのです。

 

並木

放射線状に広がる街路には見事な並木が。宅地の広さに制限があるため、分割されにくい仕組みとなっている(クリックで拡大)

ただ、その暮らしが現在にマッチしているかといえば、そのあたりは微妙なところ。田園調布は駅東側に商店街があり、駅、環状八号線沿いなどにスーパーもありますが、それほど生活の利便性が高い街ではありません。また、大きなお屋敷を維持するには主婦のマネジメント力、時間が必要で、共働きの多い時代にはいささか不向きと思える部分も。憧れだけでは難しい部分も多々あるのです。

 
住宅の供給では駅の東側、田園調布駅が最寄りではあるものの、本来の田園調布とはいくぶん離れた場所が多く、小規模。賃貸も含めて、供給は少なめです。ただ、土地価格の単価で考えるとイメージほど高くはなく、それは昨今のマンション中心の利便性重視の観点で見ると、それほど評価されないという事情のようです。
田園調布の記事はこちら。
田園調布、街路、並木の美しい憧れの住宅街

多摩川
散歩に訪れたい多摩川沿いの街

多摩川

多摩川浅間神社から見る多摩川、武蔵小杉、二子玉川(クリックで拡大)

東急東横線、同目黒線に同多摩川線が交わる駅ですが、その利便性をイメージすると見事に期待を裏切られるのがこの駅。考えてみれば、すぐ近くを多摩川、玉堤通りが走っており、多摩川沿い、線路沿いには公園もあって、住宅地、商店街などが広がるスペースはありません。多摩川と反対側には少し離れて宅地が広がりますが、田園調布駅から歩ける場所であれば、同駅を利用する人も多いはずで、東横線の中では乗降客数の少なさで最下位を争っています。

 

ただ、多摩川駅前にはかつて多摩川が一大行楽地だった頃を忍ばせるような土産物屋さんがあり、たい焼きならぬ鮎焼きなども。駅近くの高台には約800年前創建されたという多摩川浅間神社があり、ここからの多摩川、そして対岸の武蔵小杉等の眺望はなかなか。多摩川沿いの散歩も楽しめますから、住むというより、のんびりしに出かけるには穴場スポットかもしれません。

続いて武蔵小杉など、多摩川を超えたエリアをご紹介しましょう。

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