上海生まれの点心、生煎(焼き小籠包)の正統とは?
『東泰祥』の生煎は上部が丸くふくらんでいます。直径は約4.5cm、4個で一人前です。
生煎には100年ほどの歴史があるといわれています。小麦粉を半分だけ発酵させて皮をつくるため、手間と技術が必要。1930年代には専門店がたくさんできたそうですが、時代の波にのまれて数が減っていきました。更に90年代に入り経済成長のスピードが増すと、手間のかかる作業が疎まれ、伝統的な技術をもつ職人が激減。代わりに登場したのが新しいタイプの生煎です。『小楊生煎館』というチェーン店がその筆頭。革新派の生煎の皮はほとんど発酵させていないので薄くて硬く、その分スープがたっぷり入っています。熱いスープと濃厚な味わいは若い人の心を捉え、一躍ブームに。伝統的な生煎が次々に姿を消していきました……。そこで立ち上がったのが、今回ご紹介するお店、『東泰祥』なのです。
餡入りの白玉団子「湯團」やワンタンも上海で親しまれてきた食べ物。
ポイントはふんわりとした薄い皮
平底の大きな鍋にぎゅうぎゅうに詰めます。油で焼き上げたあと、水を注いで蒸し焼きに。
気温や水温、作業の時間などを細かく記録。
では、半発酵させた皮とはどのような特徴があるのでしょうか?
一言でいうなら「硬くなく、柔らかすぎない薄い皮」。生地の上の部分がぷうっと丸くふくらみ、中に空洞ができます。ふんわりしているけれど厚みはなく、スープを入れても破れない皮になるのです。底の部分は油で揚げるようにして焼き上げ、カリカリっとした食感。スープの量は控えめですが、餡を噛むとジュワっと口の中に広がります。また、煎った黒ゴマと刻んだ小葱をたっぷりかけるのもポイント。伝統的な生煎は小籠包のようにスープがメインではなく、皮の食感やゴマの香ばしさ、餡とスープの一体感、そして皮と餡の間の空気感を楽しむ点心なのです。
伝統派と革新派、同じ生煎でも特徴が異なるので、両方を食べ比べてみるのも面白いかもしれません。ちなみに、餃子や小籠包の皮は無発酵、肉まんの皮は全発酵させてつくるのだそうです。
餡を包んだ状態の生煎。すべて手作業です。
値段は4個入りの一人前で6元、エビ入り生煎でも10元という安さ。気取らず、手軽に味わえる日常の点心なのです。