ビジネスモデルの限界
次世代ハードは、多かれ少なかれこの問題を抱えています(イラスト 橋本モチチ)
任天堂というメーカーは、独自の発想でオリジナリティの高いハードを開発し、自らその特徴を引き出したソフトを開発、自社のタイトルで市場を切り開いていくタイプのプラットフォーマーです。任天堂が作った市場にサードパーティーを巻き込んでいくことができれば強力ですが、初期においてはどうしても孤軍奮闘の格好になります。
そしてその孤軍奮闘が裏目にでて、圧倒的にコンテンツが足りない状況に追い込まれています。ハードが多機能化して内蔵ソフトやサービスも充実させようとしている、3DSにもWii Uにもソフトを供給しなくてはいけない、ソフト開発はどんどん大規模化していく、サードパーティーの協力も期待できない、その中で任天堂に求められるのは、多くの人があっと驚いて、Wii Uの価値を再発見できるようなキラータイトルです。環境は苦しく、求められる要求は高くなっています。
ライバルとなるSCEのPS4は、SCEらしさをあえて捨て、PCに近い設計を選択しました。もちろんそれは、PS4というハードをどう差別化していくかという点において大きなリスクがあります。しかし、それよりも開発しやすい環境、PS4にソフトを出しやすい環境を優先した形です。これが正しかったかどうかは現時点では判断できないにせよ、そういった決断が迫られる状況であることは間違いありません。
任天堂はすでに独自路線を進んでいるわけで、そう簡単に引き返せるものではありませんし、またそれは得策ではないでしょう。今後Wii Uに関して言えば、「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」や、「マリオカート8」などのタイトルで巻き返しをはかると思われますが、コンスタントに有力なゲームソフトを提供していく、という面では苦しい状況が続くと思われます。据え置きゲーム機の開発には時間がかかります、今、Wii Uが売れていないことが、1年先、2年先のタイトル数に関わっていくのです。
巨大化しきったゲームビジネスをどう運営し、コンテンツを充実させ、魅力的なプラットフォームに育てるか、これはこれからゲーム業界が直面する大問題となるでしょう。これまでのパッケージビジネスが限界にきていることは多くのゲーム業界に関わる人間が感じていることです。
任天堂はスマートフォンにゲームを提供するべきだ、ソーシャルゲームをやるべきだというような意見もあります。それも1つの考え方ではありますが、安易なコンテンツの切り売りになればリスクもあります。任天堂が頑ななまでにこだわって築き上げたゲームタイトルの価値が損なわれることもあるかもしれません。そして最も恐ろしいことは、任天堂が任天堂らしくなくなることで、高い品質を支えている開発者が離れていくことです。
考え方、やり方に転換が必要な場面です。これまでと同じではもう、上手くいかないかもしれません。しかし、任天堂が任天堂足り得る選択をしなければいけません。今後のゲーム専用機のビジネスを占う意味でも、その判断に注目が集まります。
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