『U18』の少年少女が得るものは言葉にできないほど大きい。
彼らを羨ましく思います(笑)。
勅使川原>僕も羨ましいです(笑)。佐東利穂子もよくそう言いますね。鰐川枝里が今回講師として参加していますが、彼女はもともと『空気のダンス』の参加者で、当時高校生でした。そのクラス中に“安心していいんだよ”と言われ、とても気持ちが楽になったそうです。今では彼女自身がクラスの中で、同じことを生徒たちに言っています。2014年1月に開催された第二期『U18』デモンストレーション公演
撮影:上田茂
つまり、自信がなかったんでしょうね。でも、誰しもそうだと思うんです。佐東も初めは全然自信がなかった。自信がなさそうにしている人というのはダメじゃなくて、正直なんだと思う。その人が何かを持ってる証拠かもしれない。そうでなければ、平気な顔をしてますよ。恥ずかしそうに、出来なさそうにしている人というのは、何かを大事にしてるのかもしれない。密やかに何かを持ってるんじゃないかと思う。だからこそ、そこから自分は出られないというか、自分はどうしたらいいんだろうという戸惑いがある。僕も昔はそうでした。引っ込み思案だとか、内向的だと言われていたし、そういう部分で劣等感があった。でも大人になってみると、それは違うんじゃないかと気がついた。何かそこに、自分は想いがあったんじゃないのかと……。
佐東にしても鰐川にしても、否定されたら多分やっていられなかったでしょう。ただ“時間がかかってもやっていいんだよ”と言われたことで、“ああ、良かった”と感じられた。ダンスというのは時間がかかるものだから、それは単なるきっかけだと思う。だけど“数秒しかない”と言われるより、“10分あるよ”とか、“二時間あるよ”と言われたら安心する。“一生あるよ”って言われたら、“ああ、一生かけてやればいいんだ"と思って楽になる。誰でもそのくらい時間をかけたら、面白いものができると思います。
第二期『U18ダンスワークショップ』デモンストレーション公演
撮影:上田茂
急ぐから、今風の流行を追うことになってしまう。今風かどうかの問題じゃない。大事なことは、じっくり時間をかけようという気持ちを互いに持ち得るか。周りの人たちが“時間をかけていいんだよ”って言えること、それはある意味で文化的であり、社会的なことかもしれない。いずれにせよ、芸術を作る上ではとても大切なことだと思います。何故なら、身体って時間をかけないとわからないから。芸術は時間をかけた方がいい。
最終的に『U18』のメンバーは発表会という形で舞台に立ちますが、それは通過点だと思っています。ただ通過点だからこそ、“今しかないと思ってやろう”というのが僕の考え方。通過点を今しかないと思ってやったら、先が開かれる。でも通過点だから適当にやっちゃえと思ったら、通過ではなく、そこが終わりになるかもしれない。矛盾するようだけど、実はそれが道理だと思っています。
第二期『U18ダンスワークショップ』デモンストレーション公演
撮影:上田茂
プロフィール
勅使川原三郎
ph Norifumi Inagaki
http://www.st-karas.com/