ベルギー/ブルージュ

キリスト教遺産を巡るブルージュ(3ページ目)

「天井のない美術館」と異名をとるブルージュには、どこを見ても、キリスト教建築やキリスト教芸術などが溢れています。信者でなくとも、多少の予備知識をもち、心の目を一杯に開いて、歴史や芸術をゆっくりと感じていただきたいものです。

栗田 路子

執筆者:栗田 路子

ベルギーガイド

救世主大聖堂

ブルージュ最古の教会

救世主大聖堂

ブルージュの中心、ブルグ広場・マルクト広場から、商店の立ち並ぶステーン通りを外側に向ってしばらく行くと、左手にある大きな建物が救世主大聖堂です。ブリュージュ駅からブリュージュの環状道路伝いにZand広場からステーン通りを入っても、すぐのところにあります。遠くから、鐘楼や聖母教会の塔と並んで見える3本目の塔は、この教会の尖塔です。

この教会の建立は10世紀に遡り、ブリュージュで最も古い教会とされています。ブルージュでは、もともと司教座が置かれていたのは聖ドナティアン教会でしたが、18世紀、ブランス革命軍に壊され、司教がブリュージュから追放されてしまいます。そこで、ベルギー独立後の19世紀、この救世主教会に、あらためて司教座が置かれ、大聖堂となったのです。

階段を数段降りて教会に入るようになっていますが、そこがもともとの土地の高さだったといわれています。

宝物館では、ディルク・バウツやヒューゴ・ヴァン・デル・ゴースといった、初期フランドル派による傑作を鑑賞することができます。

<DATA>
Sint-Salvatorskathedraal (救世主大聖堂)
住所:Steenstraat 8
入場料:無料
大聖堂開館時間:月~金曜9:00~12:00/14:00~17:30、土曜9:00~12:00/14:00~15:30、日曜9:00~10:00/14:00~17:00 
宝物館開館時間:土曜日以外毎日14:00~17:00

 

ベギン会院

斜めに連なる木立が郷愁をそそる

ベギン会院

ブルージュ駅から徒歩で街の中へ向かうと、最初にたどり着くのが清楚な「愛の湖」と、そのすぐそばにあるベギン会院です。街のざわめきから一瞬にしてこの静かな空間に足を踏み入れると、不思議な感慨に満たされることでしょう。
春には黄色い水仙が可憐に咲き乱れ、夏には生き生きした青葉が目に沁み、秋には落ち葉が郷愁をそそり、冬には斜めに立ち並ぶ木々が孤独に語りかける……。19世紀に眠っていたブルージュを目覚めさせたロマン派のインテリたちが愛した、ノスタルジーやメランコリーといった趣を持つこの空間をゆっくりと、静かに味わってほしいものです。

ベギン会院は、多くのガイドブックなどで「修道院」と書かれていますが、修道院とは異なり、出家せずに世俗にいながら、自身で生計を立て、労働と祈りの日々をおくることを選んだ女性達による共同生活のコミュニティでした。今でこそ、女性が自立して、働きながら生きることは珍しいことではなくなりましたが、実は、それはつい最近まで、容易いことではなかったのです。ベギン会に入った女性達は、修道女ではなく「ベギン」と呼ばれ、門を閉ざして自衛し、勤労と学問に打ち込んだため、しだいに社会的にも大きな力を持つようになっていきました。ベギン会は、現在のベルギー・フランダース地方を中心とする地域に、多く造られました。その建築的・文化的独自性ゆえ、ベギン会院群として、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

ブルージュのそれは、1240年代に、十字軍で遠征したまま帰ってこない兵士たちの未亡人が安心して暮らすことができるように、フランドル女伯マルグリット・デ・コンスタンチノープルによって設立されたと言われています。

ブルージュのベギン会は20世紀にはその長い歴史を閉じましたが、ベギン会院跡の建物の一部が、ベネディクト派の女子修道院として使われ、今でも、数名の修道女たちが、修道生活を送っています。夜間は今も2つの門が閉ざされ、外部の人々が出入りすることはできなくなります。門が開いている間は、その敷地内を歩き、思索と内省の時を過ごすことができますが、どうか、静寂に。

一角には、ベギンと呼ばれた自立する女性達の生活ぶりを見せるミュージアムもあるので、中世の自立した女性達の毅然とした生き様に出会ってみてください。

<DATA>
Beginhof (ベギン会院)
住所:Begijnhof 24-28-30
ベギン会院開館時間:毎日6:30~18:30  
ミュージアム開館時間:月~土曜10:00~17:00/日曜14:30~17:00
ベギン会院入場料:無料
ミュージアム入場料:2ユーロ、18歳未満あるいは60歳以上は1.5ユーロ
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