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LINEスタンプが安くてゲームが高い理由(3ページ目)

LINEスタンプって、ありますよね。LINEで会話している時に、マンガやアニメの絵をペタペタと貼れる機能。40枚ぐらいの絵柄が入っていて、200円程度で買えます。これ、気軽に買っちゃうんですが、実はすごく高い買い物なのかもしれません。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

ゲームの価値は相対的に下がっている

ドラゴンクエストの図

モバイル端末向けの初代ドラゴンクエストが300円で買える、なんていうのも、ゲーム価値について考えさせられる例かもしれません

コンシューマーゲームが抱える大問題は、相対的にゲームの価値が下がっていることです。ユーザーの要望に答え、各メーカーがしのぎを削ることで、ゲームはより高度な表現で、大量のボリュームで、豊かな遊びを提供するようになりました。そのことは素晴らしいことです。しかし、そのコンテンツを制作するために大規模化した開発を賄うだけのお金を、ソフトの価格に乗せることができているかと言えば、とてもそうとは言えません。結果、ゲームは提供するコンテンツのボリューム、その制作原価に対して、相対的な価値が非常に下がってしまっているのです。

ダウンロードで衣装や新しいマップなどを売る仕組みは、1つ1つのパーツに価格をつけてバラで売ることで、制作コストと販売価格のバランスを良くしていますが、ゲームの価値自体を高めていないので、ユーザーから不満が出ることがあります。

そんなちょっとしたものを後からバラ売りせずに、最初からパッケージに入れておいて欲しい、という意見は、ゲームユーザーの間ならよく聞くことがあるんじゃないでしょうか。つまり、パッケージに払っている金額に、その程度のものは含まれていて当然とユーザーは感じているということですよね。ユーザーから価値を低く見積もられているのです。

結局、ゲームの価値が向上しなければ、大規模な開発コストを投じて大ボリュームのコンテンツを制作しているのにも関わらず、ユーザーからは高いと文句を言われるというような現象が起こります。

価値の転換が必要になる時

グラフの図

ゲームというコンテンツの価値を見直す時期に来ているのかもしれません(イラスト 橋本モチチ)

LINEスタンプのポイントは、オンラインで絵柄をバラ売りしたら、コンテンツの持つボリュームに対して価格が高くても気にならないかもしれない、ということではありません。単に画像アイコンを売るような商売はいくらでもあります。重要なのは、スタンプを使ったら会話がぐっと楽しくなるところです、そこが価値なのですから。単に好きなキャラクターというだけでなく、自分が言葉ではできない感情のようなものがスタンプで伝えられると、お気に入りになってよく使われます。

ですからそもそも、「500円ぐらいも出せばマンガ一冊買えちゃうのに!」という発想はあまりでてきません。価値の創造に成功しているのです。

これからコンシューマーゲームではさらにオンラインビジネスが盛んになるでしょう。バンダイナムコゲームスがPlayStation3用に配信している「鉄拳レボリューション」など、基本無料、いわゆるフリートゥプレイのゲームなども既に登場しています。前述のパワプロ2013にはソーシャルゲームにおける「ガチャ」も搭載されてますし、パッケージの価格よりもオンライン課金で収益を見込んでいくゲームもより増えていくかもしれません。

しかし、それらがゲームの価値を高めていなければ、単にゲームとその価格をバラバラに分解することで、高く売りつけているのをバレないようにしているだけであったとしたら、長期に渡るユーザーの支持は得られないでしょう。だからと言って、さらにさらに開発を大規模化させていって、ゲームをリッチにすることでユーザーの満足度を高めようとしても、そろそろ破綻する未来がチラつきます。

ガイドは、20の質問をやろうと思ってLINEを始めました。そしてそれが楽しくて、スタンプを購入するようになりました。LINEをやる理由としては極めて特殊なんですが、ゲーム好きがゲームをしていたら、より楽しめるツールがあったので購入した、と考えると、何かゲーム業界にも通じるものがあるように思えてきます。

そしてそのスタンプを使っていると、単なる画像の詰め合わせが、LINEの中で大変な価値を生み出していることに気がつきます。大事なことは、LINEスタンプがどこまでお金をかけて作りこまれているかということではなく、単純に使っていて楽しいということなんです。楽しいことには、お金を払ってもいいじゃないですか。そういう価値の創造、転換、ひいてはボリューム主義からの脱却が、コンシューマーゲームの中にこそ必要なよう思えてなりません。

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