ああ正負の法則(2)
第二章「私の<正負の法則>」は割愛し(美輪様が生きてきた中での経験が書かれています)、第三章「<正負の法則>を生活に活かす」を紹介します。美輪様は、夫婦、恋人、親子、友達、すべて「腹六分」でおつきあいしなさい、と言います。「腹八分」は多すぎ。「親しき仲にも礼儀あり」なのです。いちばん良い方法は、お互いに「ありがとう」をはじめ、ふだんの会話を丁寧語や敬語で話す習慣をつけること。いやな部分は見ない、見せない。東照宮の「見ざる、言わざる、聞かざる」とは、まさに先人たちの考えた人生訓の真骨頂なのです。
知り合いが多ければ多いほど、対人関係の争いや悪口、陰口、嫉妬など、厄介事もまた人数分増えていきます。世間の間違った価値判断の一つに、「孤独=みじめ、かわいそう」という<負>のイメージがありますが、孤独には孤独の素晴らしい良さがあります。大女優のグレタ・ガルボは、いつも独りで出かけていました。「自分独りだけで充分満ち足りている。他の人のお助けには及びません」という毅然とした、誇り高い姿です。
恋愛の<幸福感><充足感><快楽><楽しい><希望><やる気><情熱><活力><安らぎ><ロマンチック><叙情性><生き甲斐>など<正>の部分だけを思い望み、恋愛したいという人が多いけれど、その裏には<嫉妬><不安><悩み><苦しみ><裏切り><別れ><絶望><恨み><憎しみ><悲しみ>などが表裏一体のおまけとしてべったりとくっついてきます。幸福感が高ければ高いほど、まったく同じ量の<負>もやってきているという覚悟をしたほうが、あとあと楽なのです。
「恋しい、恋しい」と惚れすぎてしまうと、「かまってくれない」とか、「かわいさ余って憎さ百倍」となってしまいます。なるべく理性の手綱を引き締めて、100パーセント惚れないようにすること。
結婚は夢ではありません、現実です。自由を愛する人は、結婚には向きません。赤い糸で結ばれた二人というのは、実は赤い「手錠と鎖」で繋がれた仲なのです。自分が我慢強く、あきらめやすい人間だという点で自信のある人だけが結婚する資格があるのです。
二次会、三次会は行かぬが花。「あの人は酔うとこんなことを言う」とか「あんないやなやつだと思わなかった」ということになります。二次会、三次会で「飲み屋に行きましょう」「カラオケに行きましょう」とか、知的な会話や洗練された社交の方法を何一つ知らない野卑な後進国の日本人は、そればかりです。ちゃんとしたオーソドックスなものを知らない人が多すぎます。とにかく無礼講で、はめを外して、ベタベタするのが人づきあいだと思っているのです。懇親会とは「懇憎会」のことです。
若さからくるピチピチしたかわいさ、美しさ、幼さを売り物にする人たちは、三十を過ぎ、若さを引き算したら、いったい何が残るのでしょう。三十なんてあっという間にくるものです。
この章の最後がふるっています。
「ご苦労なさっている中小企業のおじさんたちも、女性の強さを取り入れ、もう少し図々しく開き直れば、自殺するようなことはないでしょう。女に学べということです。ゲイバーにでも勤めてはいかがでしょうか? なぜなら、ニューハーフの中に根性の弱いのなんて誰もいませんから。女と男、どちらが正とか負とか言えませんが、両性を兼ね備える努力をしたほうがよいでしょう」
このあと、第四章「すべてを手に入れてしまったら」、第五章「登りつめたら下るだけ」と続きますが、文字数に限りもありますので、今回はここまでとさせていただきます。
いかがでしたでしょうか? 何かしら響く言葉があったのではないかと思います。もし気になった方は、ぜひお手元に置いてお読みください。そして2014年をより良い年にしましょう。