「ブラック企業問題」と「白斑被害事件」
年末に際して今年の企業ニュースを、組織マネジメント・ツール「組織の7S」の観点から振り返ってみたいと思います。今年春には、関連著書のベストセラー化もあり「ブラック企業」という話題が世間をにぎわしました。もともと法令違反を犯す企業を指す言葉であったものが、今は主に流通業や飲食業における「労働環境劣悪企業」を揶揄する若者言葉として使われています。すなわち「ブラック企業」と呼ばれる企業は必ずしも明確な法令違反はなくとも、低賃金&長時間労働、休みが取れない、職場で精神的に追い込まれる等の事実により離職率が高いこともって非難を受けている企業が大半なのです。
今回の騒動は、そのような企業に「組織の7S」における「人材(Staff)」の扱いに対する問題提起がなされたと言っていいでしょう。「7S」の要素は密接にかかわっており、仮に法令違反はなくとも「人材」管理に問題があり彼らのモラールダウンや帰属意識に影響が及ぶなら、時間の経過とともに個々人の「スキル(Skill)」の低下や、ひいては活力が失われるなどの形で「組織風土(Style)」にも影響を及ぼすリスクを負っていると考えなくてはならないのです。「人材」は、組織の経営資源として大変重要な位置を占めています。組織マネジメント上からは、法令違反の有無にかかわらず適正な「人材」管理が求められるところです。
夏には、カネボウ化粧品の美白化粧品による白斑被害という事件が世間をにぎわしました。問題の焦点は被害申し出がありながら、1年半もの間組織としてこの問題に真剣に取り組むことなく放置したことで、被害者が1万7千人を越えるに至りました。この問題の背景に感じられたものは、同社の組織マネジメントは「経営の7S」における「組織風土(Style)」に問題があったということです。
同社は現在花王傘下にありながら、事業の独立性を重した別会社化により、度重なる粉飾決算の末破たんした前身カネボウの「社風」を引き継いでしまったままであったと各方面から指摘を受けました。すなわち、悪いものを見て見ぬふりで通り過ぎる「組織風土」があったのでしょう。花王は不祥事発覚後、親会社の管理体制に合わせカネボウの「社内システム(System)」や「組織(Structure)」面といったハード面の変更からまず手をつけ、時間をかけてソフト面である「人材(Staff)」への浸透を経て「組織風土」を変えていくことに着手しました。
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