サン・ピエトロ大聖堂の観光前に知っておきたいこと
サンピエトロ、つまり聖ペテロはキリストの一番弟子であり、初代ローマ教皇である人です。そのペテロがネロ帝(在位54-68年)の時代に殉教し、その殉教の地に墓がつくられ、その墓の上に建てられたのがこのサン・ピエトロ大聖堂です。2013年3月コンクラーベ中のサン・ピエトロ大聖堂。聖ペテロの像の下のスクリーンには、システィーナ礼拝堂の屋根の上の煙突から黒い煙があがっているのが映し出されています。この翌日、新教皇フランシスコが選出されました
サン・ピエトロ聖堂入場! 見どころや見学のコツ
階段を上ると聖堂の前庭であるsagratoというスペースに出ます。左手に広場を見ながらアーチをくぐると、そこはアトリウム(玄関廊)です。 聖堂には5つの扉がありますが、一番右は聖年の扉で、25年に一度の聖年になると開きます(次の聖年は2025年の予定)。右から二番目の秘跡の扉が通常の見学者入口。真ん中のフィラレーテの扉は通常は閉まっており、聖堂内で教皇ミサなど特別な儀式があるとき、厳かに開かれます。通常の出口は、左から見て二番目の善と悪の扉ですが、聖堂内が混み合っているときなどは左端の死の扉も開くことがあります。唯一スロープががついている扉なので、車いすの方はこちらから出入りをします。真ん中の扉の前に立つと、聖堂の全体像が見えます。手前、床の上には聖堂の身廊の全長が記してあります
聖堂内部での見学者の流れは逆時計まわりになっています。多くの人がミケランジェロのピエタ像の方に進みますが、ここはまず聖堂の全体像をとらえるため、いったん左方向に進み、5つの扉のうちの真ん中のフィラレーテの扉の前に立ってみましょう。床の上には聖堂の身廊の全長が186.36mと記されています。
それではあらためて右方向に進みましょう。最初の礼拝堂がピエタ礼拝堂で、中で白く輝いているのがミケランジェロ作のピエタ像です。右手には、先ほど外側から見た聖年の扉を内側から見ることができます。
その隣の聖セバスティアヌス礼拝堂では常に多くの信者の方が祈りを捧げています。ここには2014年4月27日に列聖された前々教皇、聖ヨハネ・パウロ2世の墓があるからです。列聖されたことにより石棺上の表示がBEATVS(福者)からSANCTVS(聖人)に替えられました。信者の方の邪魔にならないように、後ろから静かに見守りましょう。 こちらの礼拝堂では、通常毎朝9時くらいまでミサがあります。
さらに進むと、右側に秘跡の礼拝堂が。キリストの御体(おんからだ)である聖体を前に、静かにお祈りをする人のための礼拝堂なので、通常カーテンが閉まり、中が見えないようになっています。でも観光客は入場してはいけないということではなく、静かに祈るという目的であれば誰でも入れます。もちろん礼拝堂内では撮影禁止。ベルニーニ作の聖体顕示台を見たい方は、礼拝堂入口の脇に開いている小窓から静かに覗いてみてください。
ここまで身廊横の通路である右の側廊を歩いてきましたが、通常この先は行き止まり。再び左の身廊の方に出ることになります。前方右には聖ヒエロニムスの祭壇と教皇聖ヨハネ23世の墓があります。同教皇も、2014年4月27日に列聖され、サンピエトロ広場で盛大な式典が執り行われました。 聖ヒエロニムスの祭壇に向かって右の方は、告解をする人のためのスペースで、フェンスで遮断されています。こちらも、司祭に告解をするという目的を持っていれば入れます。
サン・ピエトロ大聖堂の核心へ
身廊に戻ると、右手には聖ペテロのブロンズの像があり、信者はその足に触るため列をなしています。この聖ペテロの像には、年に2回(2月22日の聖ペテロの司教座の日と6月29日の聖ペテロと聖パウロの日)ローマ教皇の法衣が着せられ、教皇の指輪がはめられます。ミケランジェロのクーポラの真下にはベルニーニ作のブロンズの天蓋(Baldacchino)がたち、その下には教皇祭壇(Altare papale)が見えます。そして聖ペテロの墓はこの下にあるのです。この部分がサン・ピエトロ大聖堂の核であり、最も神聖なエリアです。祭壇の下のエリアは聖ペテロ聖遺物礼拝堂で、正面から見るにはグロッタ(歴代教皇の地下墓所)に降りる必要がありますが、このレベルからでも手すり越しに見下ろすことができます。時間があれば、ぜひあとでグロッタも見学してみてください。さらに聖ペテロの墓の核心に近づいて、よりサンピエトロ聖堂の歴史を理解したい方には、バチカン・ネクロポリスの見学ツアーをお勧めします。料金は13ユーロで、事前にメール、FAX、または発掘事務所(Ufficio Scavi)に出向いて予約をする必要があります。
聖堂の一番奥、後陣にはベルニーニ作のブロンズの司教座と4人の教会博士の像が見えます。通常はこの手前のエリアまで見学可能なのですが、時間によっては、聖ペテロのブロンズの像の手前からフェンスで遮断されていることがあります。これは後陣にある司教座祭壇(Altare della Cattedra)でミサがあるため。
もちろん、ミサに参加する旨を係員に告げれば通してもらえます。サン・ピエトロ大聖堂では通常行うミサの時間と場所が決まっていますので、それを把握しておけば、ミサが始まる前に見学を済ませてしまうことができます。司教座祭壇では平日の17時からと休日・祝日の9時、10時半と12時15分と16時と17時半からミサがありますが、休日と祝日は1日中フェンスが置かれています。通常ミサの他に、特別ミサがあり、その都度事情は変わります。 ミケランジェロのクーポラを支える4本の大黒柱には、それぞれ聖遺物を持った聖人の像がたっています。このうち左手前の柱には聖アンデレの像があり、その右下にグロッタへの入口がありますが、明確な案内板がないので、少々わかりづらいかもしれません……。
グロッタの開館時間は10~3月は9~17時、4~9月は9~18時ですが、グロッタで行われるミサの時間帯により変動します。見学は無料。グロッタの出口は聖堂の外、クーポラのチケット売り場の横ですので、グロッタ見学をする場合は、先に聖堂の見学を済ませた方が効率的です。
左の側廊から出口方向へ
天蓋の左手、左翼廊には聖ヨセフの祭壇があり、このエリアもロープで囲われています。ここはミサの時間帯(平日9、10、11、12時、休日・祝日13時:上の写真参照)以外は静かに祈りを捧げる人のためのスペース。見学に疲れて椅子に座りたいときなど、係員に声をかけて中に入ることはできます。祈りの場所ですから、もちろん写真撮影は禁止、ガイドブックを読んだり、スマホを見たりすることもできません。中に入る方は、まわりの信者の邪魔にならないよう、しばし静かな時間をもってみてください。 聖ヨセフの祭壇エリアの左には宝物博物館(8時~17時40分)の入口があり、ドナテッロ作の祭壇、ポッライゥオーロ作、教皇シスト4世のモニュメント、ベルニーニ作天使像などが見られます。入場料金は大人8ユーロ、オーディオガイドは3ユーロで、日本語もあります。 このあたりから、左の側廊沿いに、出口方面に向かいますが、その前に変容の祭壇でラファエロの「キリストの変容」のモザイクを見ていきましょう。オリジナルはバチカン博物館の絵画館にあります。 出口に向かって右側にある大きな礼拝堂は聖歌隊礼拝堂です。一般の見学者には公開されていませんが、電気がついていれば鉄作越しに豪華な装飾を覗き見ることができます。 その隣は聖母マリアの奉献礼拝堂で、その先にはクーポラに上った人が下りてくる出口があります。先にクーポラに上ってこれから聖堂を見学する人は、聖堂入口まで戻って前述の順番で逆時計回りに見学をした方が、人の流れに逆らうことにならずスムーズです。 出口に一番近い礼拝堂は洗礼盤が置いてある洗礼礼拝堂です。こちらには、毎年12月24日から2月2日まで、大聖堂聖省職員により、キリスト生誕シーンの模型プレセーペが置かれます。雪が降っているように見える仕掛けつきで、とても雰囲気があります。毎年微妙に飾りつけを変えています。
通常の出口は、内側から見て右から2番目の善と悪の扉ですが、右端の死の扉が開いていればこちらからも出られます。
オーディオガイドを借りよう
聖堂右の階段下にある荷物預り所とオーディオガイド受付、その奥がトイレです
アトリウム(玄関廊)。右に聖年の扉、左に通常の入口である秘跡の扉、右手前にオーディオガイドの受付が見えます
■Basilica di San Pietro(サン・ピエトロ大聖堂)
住所:Piazza San Pietro, Città del Vaticano(Googleマップ)
開館時間:10~3月7:00~18:30、4~9月7:00~19:00
アクセス:地下鉄A線Ottaviano駅より徒歩10分、バス40、46、62、64番など多数
入場料:無料(クーポラや宝物博物館は入場料あり)
注意点:肌を露出した服装では入場不可。刃物など危険物は持ち込めません。大型の荷物、ベビーカーは荷物預り所に預けます。
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