イギリス人が愛してやまない不朽の名作
英国人のクリスマス観とは?
クリスマス・キャロルのあらすじ
クリスマスが近づいて来る19世紀のロンドンの下町。主人公で守銭奴のスクルージが、クリスマスイブに3人の幽霊に見せられた自分の過去・現在・未来の映像をきっかけにして、人生にとってなにが大切かを見いだして改心するという物語です。『クリスマス・キャロル』の時代背景と英国人のクリスマス観
静かに過ごすクリスマス
19世紀のイギリスは、大英帝国として発展した時期でもありましたが、資本主義の欠点が表面化し、貧富の差が拡大した時期でもありました。特に、この物語が書かれた1840年代のイギリスの労働者階級の生活は困窮を極め、「空腹の40年代」と呼ばれています。物語の登場人物も、お金持ちと貧しい人々の間で繰り広げられる物語で、当時の社会状況を色濃く反映させたメッセージ性の強い作品です。
「強きもの持てるものは、弱きもの貧しきものに愛の手を差し伸べよう。」「人間の最終的なしあわせは、お金持ちになることではなくて、人と人との愛のある繋がりを持つことなのだ。」こんなメッセージが込められているように思います。物語には、豪華なクリスマスツリーやプレゼントにディナー、キラキラしたイルミネーションは登場しません。質素だけれどもあたたかいクリスマスが描かれています。
もともとイギリスをはじめとするキリスト教国では、クリスマスは家族や親しい人たちと家や教会などで静かに過ごす時でした。きらびやかなクリスマスのお祝いが町中に溢れる一方で、このような作品がいまだ広く愛されるイギリスのクリスマスはとても興味深いですね。
ディケンズはイギリスの夏目漱石?
この作品を著したチャールズ・ディケンズは、幼少時に苦労した経験から自伝的小説を発表しています。1843年の『クリスマス・キャロル』をはじめ、『オリバー・ツイスト』」、『ニ都物語』、『大いなる遺産』などがあります。イギリスでの国民的人気や、文学的な完成度などから、ディケンズは、日本で言うところの夏目漱石のような存在かもしれません。それだけイギリス人でディケンズを知らない人はいないという大文豪なのです。英語で物語を読むには……
イギリスらしさだけでなく、普遍的なメッセージも盛り込まれたこの作品は、絵本や映画も良いですが、ぜひ英文でお読み頂きたいものです。ただ、原作は英語が現代語ではないこと、高度な語彙力が必要なことに加えて、かなり頁数が多い作品ですから、Graded readersでお試しになってはいかがでしょうか。Graded readersとは、使用する主要な単語を制限し、全体量や文法事項を調整することで、 英語学習者が辞書無しで楽しめるように書かれたものです。Oxford University PressのBookwarmシリーズが個人的にはお勧めです。【関連記事】