クアトロンの長所を残しつつフレキシブルに対応
クアトロンプロは46、52、60、70、80Vのサイズで構成されます。そのなかからLC-52XL10を東京浜松町のシャープで2度に渡り視聴しました。 入力したソースは、シャープが4Kテレビのプロバガンダに製作した海外風景のロケ映像(4Kカメラで撮影した4Kネイティブ映像)と2K高画質映像(『サウンド・オブ・ミュージック』のBD他)です。後で触れますがクアトロンプロには動作モードがあり、分割駆動モードで見る4K解像度の映像は、映像の高域(微細な振幅の信号で表示される部分)の進境がさすがにめざましく、きめ細かい信号で表示される芝目や山肌、俳優の肌の微妙な明暗変化の追い込みが4Kパネルを搭載したテレビにほぼ遜色ありません。
「それじゃあ、4Kパネルはいらないのか」と言えるかというと、そうではありません。クアトロンプロには弱点もあります。それは、液晶テレビの方式上の弱点といえる視野角です。超解像分割駆動エンジンを使うと視野角の補正が難しいのです。
クアトロンプロを正面から見ると精細感、コントラスト、色彩感とも非常に良好ですが、左右にオフセットした位置からだと一般の液晶方式より、コントラストと色彩の低下がずっと早いのです。
これに関してクアトロンプロは分割駆動のオンオフが出来る設計になっていて、同時に複数の視聴者がいる場合は分割駆動をオフにして2Kクアトロン表示に、一人で見る場合はオンにして4K相当の解像度にアップコンバートして見られる設計になっています。デモで実際の映像の変化について確認出来ますので、ぜひ量販店などで体験してみてください。
さて、このクアトロンプロをどう評価しましょうか。シャープの4Kは60Vと70VのLC-UD1系ニ機種にとどまっていてまだ高額です。「ロープライス4K」という見方も出来なくはありません。しかし、クアトロンを2Kフルビジョンの一種なのか、4Kの新提案なのか、というレベルで論じる製品ではないように思えるのです。
超解像分割駆動は4つのサブフィールド(フレーム内時分割)を持つクアトロンだから出来た新技術です。唯一無二のクアトロンが進化を遂げ、使用状況によって2Kと4K解像度の2ウェイが可能な液晶テレビという位置付けが正しいのではないでしょうか。何故なら、LC-70UD1はクアトロン方式ではありません。明るく艶やかな色彩というクアトロンの長所がクアトロンプロには受け継がれているからです。
逆に言うと、4Kのクアトロンパネルが完成した暁にクアトロンプロの超解像分割駆動を組み合わせたらどうなるでしょう? そう、8Kスーパーハイビジョン相当の画面解像度が得られるわけです。
クアトロンプロは4つのサブフィールドを持つ独自方式クアトロンの流れの中に正統的に出現した製品であり、4K導入期のギミックではないのです。テレビに他と違った技術のチャレンジを求めるなら、今必見の製品といえるでしょう。