一度食べたらやめられない“スモーケーア”
代々木八幡にあるデンマークパン専門店。私自身、数年足を運べていなかったのですが、友人からの差し入れで久々に「イエンセン」のパンを食した時の率直な感想が、「おいしすぎる」! 10年ほど前に、ここの“スモーケーア”を初めて食べた時の感動が鮮明に蘇ってきたのです。“スモーケーア”とは、クレーム・パティシエールとラム酒漬けのレーズンが入ったデンマークの代表的なデニッシュで、「イエンセン」の看板商品。バター以外にもバターシュガーやクレーム・パティシエール等がふんだんに使われているので、どっしり濃厚な味わいではあるのですが、一度食べたらやめられないおいしさがそこにはあります。
最大の魅力は、部位によって味わいや食感に様々な変化があること。低温で約1時間かけてじっくりと焼き上げられているので、中は限りなくしっとり。外側はサクサクハラハラとした食感が強調された軽い口当たりに仕上がっているのです。ケーキのようにカットされた断面を見ても、層の違いは明らか。1つのデニッシュで、ここまで違った2つの食感を生み出すには、絶妙な火加減と、紙のように薄い生地と上質の油脂を均等にきめ細かく重ねる「職人の技」が求められるだけに、この完成度の高さにはつくづく頭が下がります。
ホールで言うところの真ん中の部分から食べ進み、外側に入りかけたあたりが私一番のお気に入り。この部分は、内側のリッチな風合いの生地、底に散りばめられたラムレーズン、そして外側のサクッと盛り上がった生地と、その表面を覆うねっとりとした甘みのグラス・ロワイヤル、そのすべてを一度に味わうことができ、とにかく例えようもないおいしさです。無糖の紅茶とともに食したい逸品ですね。