1. M.Mowbrayの黒
いきなり色チェック、と言われてもなかなか解らないかと思いますので、まずは目安・基準となるものを採り上げ、それと他のものとでどう違うのかをお話しした方が解り易いですよね。そこで最初に長年の定番、M.Mowbrayの通常バージョンの乳化性靴クリームの黒から色合いを検証してみます。ご存じの方も大分少なくなったのでおさらいすると、このM.Mowbrayの通常バージョンの乳化性靴クリームは、名前こそ異なれどかつてのイギリスの靴クリームの代表格・Meltonianの直系の子孫にあたります。“Meltonian”の商標権は歴史的な経緯で現在2社が所有するのですが、その一方の、より古い方の系統にダイレクトに繋がる商品だけあり、現在の製造国はイタリアではあるものの、イギリスの靴が得意とするトラディショナルな表情を持った黒の靴とは正に切っても切れない縁のある製品です。ある程度以上靴に興味をお持ちの方なら、必ずや常備されている筈。
上の写真でお解りの通り、その色合いは真っ黒と言うよりはダークグレイで、しかもやや青味・緑味がかったもの。青味の方は以前に比べ少なくなった気がするものの、その分クリームの伸びが良くなった感もあり、黒の靴の精悍さを増すのには十分な効果を発揮します。摩擦感はドロドロもカサカサもシャビシャビもし過ぎていない、一言で申せば素直でクセのないもので、光沢もちょうどいい塩梅。相性の良くない黒い牛革のスムースレザーを探す方が難しいのも納得の、文字通り長年の定番ならではの安定した質感です。
さあ、このM.Mowbrayの黒と他のブランドの黒とではどう違うのか? 次回以降で徐々に明らかにしてゆきますので、ご期待の程!