家庭トラブルの背景にある、あいまいな「境界線」
家族それぞれの「境界線」をきちんと引けていますか?
夫婦関係のトラブル、母子密着、嫁姑問題、子どもの問題……家庭のトラブルによく見られるのが、「境界線」(バウンダリー)のあいまいな関係です。
たとえば、親や義理の親が子ども夫婦の家事や育児に口を出す。子どもが親に対して余計な世話を焼く。このように世代間の境界線があいまいになっていると、親子間のトラブルはしばしば発生してしまいます。
また、親子が密着しすぎる関係にも、境界線のあいまいさが影響していることがあります。夫婦のコミュニケーションが薄れることにより、親が子どもとの関係を心のよりどころにする。このようにして、親子間の境界線があいまいになることが、子どもの自立の妨げにつながってしまうこともあります。
三世代同居、核家族でも「境界線」はあいまいになりやすい
「境界線」があいまいになると、子どもにストレスがかかりやすくなる
核家族家庭の場合には、たとえば「一卵性母子」と呼ばれる母子密着の問題があります。一卵性親子の関係は、夫の帰りが遅い→妻の心が寂しくなる→子どもに密着する、というような背景で生まれることがあります。子どもには「母親から自立したい」という思いがあっても、心のどこかでその気持ちに後ろめたさを感じながら、密着関係を続けている人もいます。
このように、家庭内の「あいまいな境界線」によって生じた問題は、最終的に子どもが背負わされてしまうことが少なくありません。家族がそれぞれに充実して生活し、居心地のよい円満な家庭を築いていくためには、どうしたらいいのでしょう? 次の3つのポイントが大切だと考えます。
家族で「境界線」を守るための3つのポイント
家族はいちばん親しい仲だらこそ、「境界線」の意識が必要
家族からの干渉を受けて苦しくなったら、「干渉されたくない」という気持ちを上手に伝えましょう。相手を傷つけずに自分の意思を伝える方法としてお勧めしたいのが、「アサーション」です。
たとえば、親に干渉されて不快な場合、「教えてくれてありがとう」と、まず気持ちを受け止めます。次に「でも、私は自分のペースでやってみようと思う」というように、「私」を主語にして自分の気持ちを主張します。このように、相手も自分も大切にした自己主張法を「アサーション」と言います。
「干渉しないで!」と拒否するだけでは、相手を傷つけてしまいます。「相手の気持ち」と「自分の気持ち」の両方を大切にすれば、相手に配慮しながら自己主張でき、境界線を守ることができます。
2. 安易に家族の「責任」を背負わない
境界線があいまいになっている家庭では、誰かの「責任」を他の家族が背負っているケースが多いものです。たとえば、本来は親が自分、あるいは夫婦で向き合うべき課題を子どもが背負っていることがあります。
自分の課題は他人に相談したり、家庭の外に楽しみを持つなどして、自分の責任で解決するのが基本です。課題の背景に夫婦関係の希薄さがあるなら、夫婦間で会話の機会をつくるなどして、夫婦の責任で解決する必要があります。
子どもも、「お母さんがかわいそうだから」「自分しか支えられないから」といった思いで、親の責任を安易に背負わないことです。自分のほうから境界線を意識すれば、親にも「自分(夫婦)の問題は、自分(夫婦)で解決する」という責任感を自覚してもらうことができます。
3. 「バリア」ではない「境界線」を家族全員で認め合う
境界線は、英語で「バウンダリー」と呼びます。個人の自由とパートナーシップを重んじる欧米では、家族それぞれの境界線をとても大切にしています。ところが、日本ではこれを「バリア」(防壁)と捉え、「水くさい」と感じている方も少なくないかもしれません。
境界線は「バリア」(防壁)ではなく、「柵」のようなものであるとイメージしてみてください。柵は壁のように遮断されていないため、互いの変化にすぐに気づくことができます。家族として互いの行動を見守りながら、個としての境界線を尊重していく。そんな居心地のよい関係をつくっていくことを、家族で話し合っていくとよいかと思います。
境界線は、世代にも個人にもあります。自他の境界線を大切にするからこそ、一緒に生活しても苦しくならず、居心地のよい関係を保つことができるのです。長く円満な家庭を築いていくためにも、ぜひ境界線を尊重していきましょう。