相手を無視するネグレクトも実は暴力の一形態

相手が何を言っても聞こえないふりをする……といった事も時にはあるかも知れません。実は、ネグレクト(無視)も相手の気持ちを傷つけるという面から、広義には暴力行為の一種です!

人間の本能には広義な意味で暴力的な面も備わっていると思います。例えば、誰かにひどく侮辱されてしまったとき……。人によっては思わず我を忘れて怒りを露わにしてしまい、その相手を激しくののしってしまう場合もあるでしょう。その場では何とか気持ちを抑えても、家に帰ってからやり場のない怒りが込み上げて来て、部屋の壁を思わず素手で殴ってしまった……ということも、場合によってはあるかもしれません。

私たちは社会的に暴力行為が許容されていないことはよく認識しています。もし仮に街頭で喧嘩が始まったら、すぐに周りから何らかのストップが掛かるでしょう。しかし暴力が家庭内で起きている場合、外からのストップがなかなか掛からず、暴力行為がエスカレートしてしまう可能性もあります。

今回は家庭内暴力(DV)の形態と、その問題点、そして家庭内での暴力行為をいかに予防していくかを詳しく解説します。

精神的暴力・ネグレクト……身体的暴力だけではないDV

「家庭内暴力」「ドメスティック・バイオレンス(DV)」と聞くと、夫婦喧嘩の最中に夫が妻に手をあげたり、親が子供に暴力をふるう虐待などの、身体的暴力をイメージされることが多いかと思います。

身体的暴力はDVの代表的な形態ですが、心が深く傷つくという面から見れば、暴力行為は身体的暴力だけに限りません。例えば暴言のような、言葉による暴力、その反対に、相手が何を言っても無視するネグレクトも、心が深く傷つくという面から暴力行為の一種と考えられます。さらには、嫌がる妻に夫が無理やり迫るような性的な暴力も、この家庭内暴力の一種です。

いずれの場合も家庭内での出来事なので、かつては他人があれこれ言うことではないと認識されていました。しかし現在では、暴力行為がエスカレートしてしまった場合、例えば被害者の身体的安全が脅かされているような場合、外部からの介入が望ましい場合もあるということが、広く認識されるようになっています。

DVによるダメージは身体的はもちろん、心の傷も無視できません。例えばDVのために、うつ病を発症してしまったり、DVがトラウマ化してしまい、DVが終わったあともしばらく時期を置いてから、その恐怖体験が悪夢やフラッシュバックといった形で蘇るPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性もあります。また、親から虐待を受けて育った子供は、成人後、自分が親になった時、自分の子供を虐待しやすい傾向があり、虐待が次の世代でも繰り返されてしまう可能性もDVの大きな問題点の一つです。

負のスパイラルでエスカレートしやすいDV行為

DVがコントロール不能なほどエスカレートしていくのは、ごく一部の家庭に限定されるでしょうが、暴力行為の芽自体は、どの家庭にも潜んでいる可能性があると思います。

例えば、夫が妻の何気ない一言に切れてしまい、思わずテーブルをこぶしで力一杯、叩いてしまった。あるいは、妻が夫の態度に腹を立てて、しばらく夫を無視する……。多くの場合、これらの事態はそれ以上にはならないでしょうが、もしも本人に何らかの素因があり、さらに何らかのネガティブな要因が揃っているような場合は注意が必要です。

例えば、
  • 本人の素因として、元々、情動にかなり不安定な傾向がある
  • 劣等感に苛まれ、自分に自信がない
  • 相手に対する支配欲が高く、暴力がその手段になりやすい
さらに、これらの傾向に拍車をかけるように、生活が非常に不安定で、将来の展望を見いだせなくなっていたら……。DVは自分が抱えている深刻な問題を何一つ解決しません。心の不安定さは増す一方で、相手への暴力がますますエスカレートしていく可能性があるのです。

DV被害防止の第一歩は、初期段階で芽を摘み取ること

DVは、ごく一部の家庭で起きることで、自分たちは関係ないと思っている人が多いかも知れません。しかし厳しいこの時代、思いがけず逆境に追い込まれてしまう可能性は誰にでもあるのではないでしょうか。そんな時、たとえ家庭内で暴力の芽が生じたとしても、それがエスカレートしてしまわないよう、そうなる要因を未然に摘み取るようにすることが必要です。そのために是非、意識して頂きたい事が幾つかあります。

まずは日常のストレス対策。日常のストレスは気分を不安定にし、衝動をコントロールしにくくさせる大きな要因です。趣味でも娯楽でも、上手にストレスを解消させる方法を知っておくことは大切です。ただし、飲酒やギャンブルなどがむしゃくしゃ感を晴らす手段になってしまうと、依存症のリスクも出てきます。結果的に、これらの依存症の傾向が暴力的衝動につながる危険もあることは心にとどめておいてください。

また、もしも普段から自分の情動の不安定さを自覚しており、そのために生じる日常生活上の支障も自覚されている場合は、脳内環境が病的になっている可能性もあります。深刻な事態にならないうちに、是非、精神科(神経科)受診も考慮してみてください。

また、暴力がエスカレートしていく際には、その被害者の対応が適切でなかったり、適切な対応を取るのが遅れてしまったりする可能性もあります。例えば、夫に暴力をふるわれた後、夫に誠心誠意、謝罪をされて許してしまう女性もいるでしょう。それで事態が解決すれば良いですが、同じことがその後も何度も繰り返されていくような場合は、妻は夫の暴力にどう対処すべきか混乱しているのかも知れません。でも第三者から見れば、対処がよく分かる場合も多いと思います。いざという時に備えて、信頼できる相談相手は普段から確保しておきたいものです。

最後に、言わずもがなの事かも知れませんが、暖かい家庭は、心の健康を保つ大切な基盤です。DVは、その暖かい家庭を壊す要因の一つ。もしも暴力の芽が家庭内に現われたら、見過ごさないことが大切です。例えば、お子様がそれまでかわいがっていた飼い犬をいじめ始めたような場合、見過ごさずに、じっくりお子様と話し合ってみることも大切です。暴力の芽を未然に摘むことが大切だという点を、皆さまには是非、意識して頂きたいです。
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