デビュー作がいきなり国内外の映画賞を受賞!
『運命じゃない人』(2004年度作品)
寡作だけど作品が発表されると話題になる内田けんじ監督の長編デビュー作は、男と女、それぞれの失恋が、詐欺とヤクザと金の大騒動を巻き起こしていくラブサスペンス。それぞれの事情がからみあう、これまたひとつの群像劇。この映画は人物の配置と構成がすごいです。
主人公の男のもとから恋人が失踪。ガックリしているとき、主人公は友だちに食事に誘われます。レストランでは友だちがナンパした女性と3人で食事しますが、友だちはいつのまにか帰ってしまい、女性は行く場所がないというので、主人公は自宅に泊めることに。すると元カノが突然荷物を取りに来たので、ナンパ女性はいたたまれず出ていき、主人公はナンパ女性を追いかけます……。この一連の騒動が、各々の視点で綴られていくと「え~、そうだったの!」という驚くべき真実に変化していくのです。
内田けんじ監督は、この映画で国内外の映画賞を受賞。非常に高い評価を得たのですが、それも見れば納得。友だちが食事に誘った理由、元カノが荷物を取りに戻ってきた理由、ナンパ女が急に帰ってしまった理由、それぞれに真実に繋がるワケがあり、それが物語の進行とともにスルスルと紐解かれていくのですよ~。真相がわかったときにカタルシスったらもう!
ねっちり人物を描きこんだ群像劇じゃないけど、サスペンスフルな群像劇なら、これくらいスピーディにスマートに決めてほしいですね。傑作です!
監督・脚本: 内田けんじ
出演:中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏ほか
※群像劇は登場人物が多いから、それぞれの事情や心情が見ている人にヒットする可能性が高いのですね。だから人気が高いのでしょう。まだまだ群像劇はたくさんあります。『セントエルモス・ファイヤー』『マグノリア』『12人の優しい日本人』などなど。機会があったらまた紹介していきたいと思います。