この絵本は宇宙そのものだ?! 『うちゅうたまご』
何もない、本当に何もない真っ白な画面に、ぎゅーんと描かれた1本の黄色い線。それがこの絵本の始まりです。宇宙がビッグバンから生まれたように、絵本『うちゅうたまご』も無から突然生まれました。たったいま、誕生したばかりのうちゅうたまごは、本物の宇宙のような成長を私たちに見せてくれるのでしょうか?荒井良二さんのライブペインティング作品
『うちゅうたまご』は、「ライブペインティングで絵本が作れるか」という作者の挑戦から生まれた作品です。表紙のピンクに見とれながら本を開くと、突如現れるのはシルバーメタリックの見返し。冷たく輝く銀色が宇宙船を思い起こさせますが、もちろんこの作品はSFではありません。さらにページをめくると、大きなキャンバスにこれでもかというほど大きく描かれた黄色い線。それを作者はうちゅうたまごと名付けました。さあ、ここからが、ライブペインティグの醍醐味です。うちゅうたまごは、荒井良二さんの手によって、どんどん拡がり、形や色を変え、思いがけない方向に変化していきます。太陽や月が生まれ、朝や夜がもたらされました。命もうまれ、たくさんの動物や植物が躍動し始めます。
芸術はエネルギーを生むものだ
多くの生き物が生まれたその後で、今度は、楽しい気持ちや悲しい気持ちといった目に見えない感情までが、たまごの中から生まれていきました。そのことを、作者は作品の中で、次のように表現しています。この作品では、鮮やかで力強いさまざまな色が、絵本の言葉通りに迫力をもって私たちに迫ってきます。でも、感じる迫力に威圧感はありません。むしろ、母の愛に包まれているような、穏やかな温かさがあるのです。そしてその心地よさの中で、たまごがダイナミックに変化していく姿からは、命のエネルギーを感じずにはいられません。芸術がなんらかのエネルギーを生みだすものならば、この絵本は間違いなくアートです。たのしいときは いろが おどる (中略)
かなしいときは いろが なく
【書籍DATA】
荒井良二:作
価格:1575円
出版社:イースト・プレス
推奨年齢:3歳くらいから
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※参考
11月 アートな絵本を自由に楽しむ鑑賞ガイドにて『うちゅうたまご』を紹介しています。