大航海時代の街並みが残る世界遺産「古都ビガン」
石畳とパステルカラーのコロニアル建築がかわいらしいクリソロゴ通りの家並み。車の乗り入れが禁止されているため、カレッサ(馬車)が行き来している
しかし第二次世界大戦中、アジアの多くの植民都市が戦渦に巻き込まれ、灰燼に帰した。そんな中、ビガンは軍の破壊命令に背いたひとりの軍人の決断により、大航海時代の家並みがそのまま残された。今回はそんなフィリピンの世界遺産「古都ビガン」を紹介する。
多文化融合都市ビガン
とても絵になるクリソロゴ通りの裏通り。建物の高さを合わせて整然と連なる家並みはヨーロッパの古都を彷彿させる
ホセ・ブルゴス神父の生家を改修したブルゴス国立博物館。スペインの暴力的な統治に反対して処刑された神父で、フィリピンの英雄のひとりに数えられている
碁盤の目状に整理された街並み、美しい石畳、コロニアル調の石造建築、優雅に闊歩するカレッサ(馬車)……メインストリートであるクリソロゴ通りを歩いていると南ヨーロッパの古都に迷い込んだようにさえ思われる。
でも、一軒一軒の建物をよく眺めると、ヨーロッパではまず見られない独特のデザインであることがよくわかる。木製のベランダ、瓦屋根、貝殻をはめ込んだ格子窓、なかには1階は石造で2階は木造なんていう家もある。
1階が石造、2階が木造の家屋。屋根は瓦葺きだ
そこで石と木を組み合わせたバハイ・ナ・バトという半石造の建築様式が考案され、屋根には中国人が持ち込んだ瓦が採用された。こうして植民者であるスペイン人、先住民であるイロカノ人、商人である中国人の文化が融合した独特の街並みが誕生した。