みずほ銀行事件と減点評価主義風土の弊害
次に取り上げるのは、みずほ銀行が関連クレジット会社経由での反社会的勢力向け融資を長年放置していた一件です。これは、上記とは全く異なる理由によるコンプライアンス違反事例です。銀行のような信用第一を掲げコンプライアンス管理にもっとも長けていると思われる組織で起きたこの事件。その原因を紐解くカギは、銀行界特有の組織マネジメントの盲点にこそあり、起きるべくして起きた事件であると思われます。みずほ銀事件の陰にあるのは「保身」文化
銀行に限らず減点方式で人を評価する組織マネジメントにおいては、風土として「保身」文化が生まれやすくなります。こういった企業では、たとえコンプライアンス違反があったとしても「見て見ぬフリ」で通り過ぎるような隠ぺい体質になりやすく、十分な注意が必要なのです。
このように、コンプライアンス違反は必ずしも悪意に満ちた組織マネジメントの下でのみ発生するものではなく、むしろ「組織の7S」で言うところの「組織風土(Style)」に起因して無意識的な状況下においても発生するものでもあります。そしてまた「組織風土」最大の決定要因は組織のリーダーたる経営者自身でもあるのです。上記のいずれのケースにおいても経営者自身の認識の甘さがあったことは否定できない事実でしょう。
理由はどうあれ、経営者自身のコンプライアンス意識が甘いなら、それはすなわち組織としての企業が無意識的なコンプライアンス違反に向かう大きな原因にもなりかねません。経営者は自らにコンプライアンスに対する認識の甘さがないか否かを確認するとともに、常に「組織風土」のあり様を把握した上での十分なコンプライアンス管理が必要なのです。