マネジメント/組織マネジメントとは

名門企業や銀行でもコンプラ違反はなぜ起きる?(2ページ目)

組織存続の大前提として、組織マネジメント以前にその重要性を認識すべき企業コンプライアンス。組織管理に甘さの残る新進企業だけでなく、名門老舗企業や信用第一の銀行でも重大なコンプライアンス違反が起きるという事例が相次いで発生しています。なぜこのような事態が発生するのか、実例を元に真相を探ります。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド


みずほ銀行事件と減点評価主義風土の弊害

次に取り上げるのは、みずほ銀行が関連クレジット会社経由での反社会的勢力向け融資を長年放置していた一件です。これは、上記とは全く異なる理由によるコンプライアンス違反事例です。銀行のような信用第一を掲げコンプライアンス管理にもっとも長けていると思われる組織で起きたこの事件。その原因を紐解くカギは、銀行界特有の組織マネジメントの盲点にこそあり、起きるべくして起きた事件であると思われます。

解説

みずほ銀事件の陰にあるのは「保身」文化

銀行界特有の組織マネジメントの盲点、それは銀行が免許業務であるがゆえ、長らく監督官庁による「護送船団方式」と言われる完全監視体制下で身に付けさせられた減点評価主義です。この減点評価主義ゆえに、ミスをして“お上”から罰則を科される減点を恐れるあまり組織として「保身」に走り、「臭いモノにフタ」ならぬ「臭いモノを見て見ぬフリ」が高じ、好ましからざるコンプライアンス事例に長らく目をつぶってきてしまったのでしょう。事件の真相は今後の調査に委ねられますが、銀行経営の思わぬ落とし穴は意外なところに存在するのです。

銀行に限らず減点方式で人を評価する組織マネジメントにおいては、風土として「保身」文化が生まれやすくなります。こういった企業では、たとえコンプライアンス違反があったとしても「見て見ぬフリ」で通り過ぎるような隠ぺい体質になりやすく、十分な注意が必要なのです。

このように、コンプライアンス違反は必ずしも悪意に満ちた組織マネジメントの下でのみ発生するものではなく、むしろ「組織の7S」で言うところの「組織風土(Style)」に起因して無意識的な状況下においても発生するものでもあります。そしてまた「組織風土」最大の決定要因は組織のリーダーたる経営者自身でもあるのです。上記のいずれのケースにおいても経営者自身の認識の甘さがあったことは否定できない事実でしょう。

理由はどうあれ、経営者自身のコンプライアンス意識が甘いなら、それはすなわち組織としての企業が無意識的なコンプライアンス違反に向かう大きな原因にもなりかねません。経営者は自らにコンプライアンスに対する認識の甘さがないか否かを確認するとともに、常に「組織風土」のあり様を把握した上での十分なコンプライアンス管理が必要なのです。
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