図書館にライオンがやってきた!
小さなお子さんと図書館に入るとき、独特な緊張感がわいてきませんか? 特に幼児期は、いきなり走り出したり、大きな声を出したり、棚の絵本を次々引っ張り出したり。でも、たくさんの本に囲まれた空間は、ワクワクするところでもありますね。みんなが心地よく過ごすために、「大きな声を出さない」「走らない」をという基本的なきまりを守るべき図書館。そんな図書館に、ある日、1匹のライオンが入ってきました。周囲の驚きの目をよそに、悠々と貸出カウンターの前を通り過ぎ、館内を静かに徘徊します。そして、絵本の部屋ですやすやと寝入ってしまいました。やがてお話の時間が始まると、ライオンは読み手の戸惑いなんかお構いなく、子どもたちと一緒に静かに聞き入ります。
きまりに厳しい2人の大人に存在した決定的な違い
図書館には、きまりに厳しい2人の大人がいました。館長のメリウェザーさんと、館員のマクビーさんです。お話の会で3冊の絵本の読み聞かせの間、じっと聴き入っていたライオンは、読み聞かせが終わると、みんながポカンとするほどの雄叫びを上げてしまいました。どうやら、もっと絵本を読んでほしかったようですね。当然、メリウェザー館長さんがやってきました。「しずかにできないのなら、としょかんから でていっていただきます。それがきまりですから!」。
しょげ返るライオンを囲みながら、子どもたちが、静かにすればライオンはまた図書館に来ていいか問います。メリウェザー館長の答えはOKです。きまりを守ることさえできれば、ライオンだっていいというのがメリウェザー館長のスタンスです。次の日から再びライオンは図書館を訪れ、お話の時間を待つまでに、館長のお手伝いもします。子どもたちを背中に乗せて、高い所にある本を取るのも手伝ってあげます。老若男女問わず、ライオンとの交流が生まれ始めます。そんな様子に疎外感を味わってしまったのが、館員のマクビーさんでした。「ライオンにきまりのことがわかるはずないし、としょかんにライオンがいるなんてきいたこともない!」。これがきまじめに図書館のために尽くしてきたマクビーさんの思いでした。
ライオンが一番大きく変えた相手は?
そんな中、1つの事件が起こります。その大変な事態を、図書館で重要な役割を担っているマクビーさんに伝えるために、ライオンは、館内を駆け抜け、今まで生きてきた中で一番大きな声で吠え立ててしまいました……。そのおかげで事態は深刻にならずに済んだのですが、やってはいけないことをやってしまったライオンは、静かに図書館を後にし、姿を見せなくなりました。もちろん、メリウェザー館長を始め、図書館を愛用する子どもたちも大人たちも、寂しがりました。しかし、それ以上に一番動揺したのが、マクビーさんだったようです。ライオンを探し回り、また訪れるように仕向ける言葉をかけたのは、マクビーさんでした。
「きまりとは?」に決まった答えはない
図書館のきまりは、何のためにある?
私がつらつらと考えているうちに、ライオンが戻った図書館は、温かい雰囲気に包まれました。無表情だったメリウェザーさんやマクビーさんの、なんと表情豊かな優しい顔つき。「きまり」というものが、みんながこんないい顔になるために存在するものだったらいいなと思いました。