漢方・漢方薬/便秘・下痢・食欲不振の漢方

二陳湯(にちんとう)

胃に不快感があったり、嘔吐、二日酔い、食欲不振などの症状がある場合によく用いられる処方です。体内にたまっている余計な水分を排出するので、メニエール病によるめまいや頭痛にも有効とされています。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

「二陳湯」はどんな人・どんな症状にいいの?

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めまいによく使われる半夏白朮天麻湯も、二陳湯を加減した生薬

せきや白い痰が多く出るタイプに。胸がつかえて苦しい、カラダが重だるい、吐き気、嘔吐、めまい、動悸などが出るときにオススメ。

「二陳湯」の効果

胸のつかえ、吐き気、嘔吐、めまい、動悸などに。水分代謝が低下して起こる、慢性気管支炎、肺気腫、妊婦の嘔吐、神経性の嘔吐などにもよい。

「二陳湯」に入っているもの

半夏(カラスビシャクの塊茎)、橘紅・陳皮(ウンシュウミカンの果皮)、茯苓(サルノコシカケ科の菌核)、生姜(ショウガの根茎)、甘草(マメ科などの根やストロン)。

「二陳湯」が合わない人

乾いたせきや、出にくい痰には不向きです。なお、このおクスリは「湿痰(しつたん)」といって、体内に余計な水分がたまっているのを改善する基本的な方剤なので、カラダが冷えているタイプは乾姜や細辛、食べ過ぎによるものはサンザシや麦芽など、具体的な症状によって生薬を加味するといいでしょう。

「二陳湯」の飲み方などの注意点

■ 飲む時間
一般的には食事と食事の間の空腹時、食事の前の30分前など、お腹が空で胃に吸収されやすい時期に飲みます。胃腸が荒れやすい人は食後、通便させるクスリは空腹時の服用を勧める場合もあります。なお、食間に飲み忘れた場合は食後でいいので、飲みましょう。

■ 「水」or「白湯」?
症状によって、冷たい水で飲むほうが効果的な場合(その反対も)もありますが、基本的には生薬を水で煎じた「煎じクスリ」の場合は、人肌に冷まして飲みます。生薬の有効成分を抽出して乾燥・加工した「エキス剤」の場合、お湯に溶かしたり、水と一緒に飲んでください。

「二陳湯」の副作用

体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、不快な症状や副作用が出ることがあります。ちょっとおかしいな、と思ったらすぐ服用をやめ、漢方の専門家や処方してくれた医師に相談しましょう。

「二陳湯」が買える場所

漢方薬局や病院、診療所、ドラッグストアなどです。
代表的な商品名:(アイウエオ順)
  • クラシエ 二陳湯エキス顆粒 (クラシエ薬品)
  • ツムラ 二陳湯エキス顆粒・医療用 (ツムラ)
  • 東洋 二陳湯エキス細粒・医療用 (東洋薬行)

「二陳湯」の漢方的メカニズム<中級者向けトリビア>

脾胃の運化を正常にし、気機をスムーズにすることで、湿痰を取り除きます(燥湿化痰、理気和中)。

■ 具体的な生薬の効能
主薬は辛温性の半夏で、消化機能を整えて体内に滞っている余計な湿気を取り除きます。陳皮は気の流れを整え、痰を出しやすくし、半夏の働きをサポートします。

茯苓は胃腸の働きを正常にし、水分代謝をよくすることで痰をできにくくし、甘草はほかの生薬を調和し、消化器の働きを高めます。生姜は上部にあがった気を下ろして嘔吐を止めたり、半夏の毒性を抑えたり、痰を取り除きます。

「二陳湯」のおまけのエピソード

この漢方は、胃に水分が停滞し、吐き気や嘔吐にオススメの小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)に、陳皮・甘草を加味した漢方でもあります。

このように痰や水分代謝の異常には、泌尿器をつかさどる腎・膀胱や、呼吸器をつかさどる肺だけでなく、消化機能(脾胃)を整えることが漢方では大事とされていて、「脾は生痰の源なり、肺は貯痰の器たり」と表現したりします。

ちなみに、処方名の二陳とは「半夏」と「陳皮」のことで、古い(陳)ものほど効果が高い、良薬とされます。
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