ドイツ語圏のよく目にする苗字を確認してみよう!
ドイツ語圏の苗字……意味・由来
<目次>
ドイツ語圏の苗字……科学者・思想家
まずは科学者・思想家から。 ドイツ人の姓には地名に由来するものが少なくありません。アインシュタイン(Einstein)も実はそうですし、哲学者カント(Kant)やウィトゲンシュタイン(Wittgenstein)の名も先祖の出身地に拠るものです。また、ハイデッガー(Heidegger)の由来である「荒野(Heide)の隅(Ecke)の者」のように、住まいの位置から名字が決まる例も見られます。一方でやはり多いのが、職業名に由来する姓。ケプラー(Kepler)やコッホ(Koch)、ウェーバー(Weber)やシュタイナー(Steiner)といった名字は、帽子や料理、織物や石を扱う、祖先の従事した職からとられているわけです。
ドイツ語圏の苗字……音楽家
続いて、ドイツ語圏といえばやはり音楽家が外せませんね。オランダ由来のベートーヴェン(Beethoven)の名はちょっと分かりにくいですが、「カブ(Beete)の畑(Hof)」にオランダ語で出自を示すvanがついたもの。ドイツ語のvonと似ていますが、こちらは貴族の敬称ではなく単に出自を表す表示となります。
シューマン(Schumann)とシューベルト(Schubert)。似た名前ですがシューマイともシュークリームとも関係なく、共に「靴(Schuh)作り職人」の意。ちなみにF1レーサーのシューマッハ(Schumacher)も同じです。
ドイツ語圏の苗字……文学者・画家
続いて文学者・画家から。 ルネッサンスの巨匠、デューラーの祖先はハンガリー出身の移民であり、かつてはハンガリー語で「扉」を意味するアイトーシュ(Ajtos)に住んでいました。これがドイツ語で扉(Tür)に拠るデューラー(Dürer)という姓および彼の紋章の由来となっています。紋章といえばオーストリアの画家フンデルトヴァッサー(Hundertwasser)も挙げておきたいところ。日本びいきだったらしい彼は自分の名字に漢字をあてた「百水」の印章を好んで用いていました。美術館で確認してみましょう。
ドイツ語圏の苗字……スポーツ選手
サッカーを始め、ドイツはスポーツ選手も知られていますね。 サッカーファンに「皇帝」と讃えられるベッケンバウアー(Beckenbauer)。そのつづりから「たらい(Becken)を作る(bauen)者」の意かと思われがちですが、こちらのベッケンは実は「パンを焼く(bäcken)」の古いつづり由来で、「パン焼き職人」を表します。テニスのベッカー(Becker)も同じです。そしてドイツのサッカー選手でも一際ユニークな名字がシュヴァインシュタイガー(Schweinsteiger)。「豚(Schwein)に登る(steigen)人」のようですが、実は「シュヴァインシュタイク(Schweinsteig)」という地名に由来し、そのSteigとは「家畜小屋(Stall)」を意味していました。豚の飼育で知られた地の出というわけですね。
ドイツ語圏の苗字……日本でも知られた人名
その他、日本でも知られた人名を挙げてみましょう。 宗教改革者ルター(Luther)にとって、姓は重要な意味を持ちます。というのも彼の本来の姓はLuderとつづられていたのであり、1517年の『95ヶ条の論題』以降、ギリシャ語のEleutherios(自由なる者)に関係付けて自らのつづりをLutherと改変しました。まさに『キリスト者の自由』を説いた神学者に相応しい名称となったというわけです。ドイツ語圏の苗字……英米人
第二次大戦期、ナチスによる迫害を逃れて亡命したユダヤ系の人々が多いことから、特に英米人にも多くのドイツ系の姓を認めることができます。 経営学者ドラッカー(Drucker)も、オーストリア出身亡命ユダヤ人の一人。Druckerは「印刷工」の他、今日では「プリンタ」を意味します。同じくオーストリア出身で、アメリカに渡った俳優・政治家のシュワルツェネッガー(Schwarzenegger)。“Schwarze Neger“(黒い黒人たち)?なんて聞こえてしまいそうですが、実際はハイデッガーの由来と同様、「黒い(schwarz)隅(Eck)に住む者」から。具体的には針葉樹に黒々と覆われた突き出し地に住んでいた者たちが名乗った名字のようです。
というわけで、聞きなれた名前も探って見れば色々な意味がこめられているもの。「ガイガー・カウンター」の発明者ガイガー(Geiger)の由来が「ヴァイオリニスト」だったり、スパイとして知られたゾルゲ(Sorge)が「不安」だったり、人物の運命と名がしばしば皮肉な照応を見せることもあります。こうした由来を探れば、言葉や歴史への関心もいっそう深まってゆきますよ。
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