「10歳の壁」「小4の壁」の正体とは

小学生のお子さんを持つお父さん、お母さんなら、懇談会などで一度は「小4の壁」という言葉を聞いたことがあると思います。小学校の子どもの成長過程で、一つの関門的にとらえられている「小4の壁」は、別名「10歳の壁」ともいわれます。でも、その正体が何であるか、きちんと判っていますか?

10歳の壁は、元々は精神的成長に伴う変化を指していました。でもそれは、いまから10年くらい前までは、の話です。そのころまでは、「子どもが新しい人格を手に入れる」「もう一度生まれ変わる」などと解釈されていました。それだけに、「うちの子扱いにくくて本当に困っちゃう」なとどいう声が聞かれる時期でもありました。

また男の子をお持ちのご家庭では、ちょうど「ギャングエイジ」と重なるため、より一層扱いにくさが感じられていたように思います。「ギャングエイジ」とは、排他的な遊び仲間を求める主に小学生ごろのことを指します。徒党を組んで何かをしたがる傾向が子どもに見られ、大変お母さんたちが振り回されやすくなる時期ともいえますね。

ところが最近の「10歳の壁」「小4の壁」は、少々意味合いが変わってきています。それには学校教育のカリキュラム改変が大きく影響しているともいえます。それらのことを視野に入れて「小4の壁」と向き合わないと、乗り越えられない時代に入ったともいえるでしょう。


「10歳の壁」はなぜ生まれたのか

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幼いころから探究心を育てましょう

実は、2009年ごろから学力低下の問題を受けて、学習指導要領は改訂されています。算数、理科は前倒しで新しいカリキュラムへの移行が始まった2009年。授業時間も増えましたが、それ以上に学習内容が全体的に増加、前倒しの傾向が出始めたのです。こうした中で教育現場では「小4の壁」が注目されるようになりました。

従来、「10歳の壁」として捉えられてきた内面的成長に対するバランスの悪さ。それに加えてこの20年間で授業時間が削減され、学習内容も優しくなっているにもかかわらず、勉強についていけなくなる児童が急激に増加。それがより顕著に表れたのが9歳~10歳、つまり小学4年生前後だったために、「小4の壁」と表されるようになりました。

原因の一つに考えられているのが「考える力」の低下。算数の場合、計算は得意でも、文章題になるとできなくなるといったような事例が目立ちます。背景としてドリルに依存した学習スタイルや、家庭での会話の減少などが理由と思われるコミュニケーション能力の遅れなどが指摘されています。実際の統計でも、日本全体が中位層より下位層の学力の生徒が増えていることなどが判っています。

これらの事態を受けて、文部科学省は指導要領を改訂し続け、ここ数年で教科書は厚みを増し続けています。とはいえ、急激に子どもの考える能力が育つわけもなく、小4の壁は確実に今も存在し続けている、といった状況にあるのです。

「10歳の壁」とどのように向き合い、乗り越えるか

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失敗から学ばせることも大切

最初から正解を与え続けたら。人間はいったい、どうなると思いますか? はたして考える力は育っていくでしょうか? 答えは反対です。正解だけを最初から知り、実践し続けた子どもは間違うことが怖くなり冒険しなくなります。自分の能力以上の課題が来たときに、そこに対し「工夫して乗り切る」という力を持つことが難しくなるのです。

やり方を教えてしまうことは簡単ですが、それでは何も編み出さなくなります。編み出す必要がないからです。失敗しないで、難なくできてしまった子どもは、例えそれが自分の実力じゃないとしても(親から言われたことを実践し続けた結果だとしても)自分の実力であると勘違いして大人になっていきます。

その結果、何が起こると思いますか? 親の理解を越えたとき、もしくは自分の経験を越えたとき、大きな壁にぶつかって、乗り越えることができずに最悪潰れていってしまうこともあり得るのです。

何も与えられないということは、ある意味自由に何でもできます。失敗も多い代わりに、そこで得た経験は大きな財産となり「工夫して乗り切る」というスキルを身につけます。この「工夫」=「知恵」であり、この知恵こそがかつて日本が経済大国になってきた元でもあると考えられるのではないでしょうか?

与えすぎないこと。悩ませて、失敗させて、工夫することを子どもの体と脳に教え込むこと。それが結局は一番最短で「10歳の壁」を乗り越える攻略法なのかもしれません。


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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。