理学療法士

理学療法士試験(内科学・臨床神経医学)の問題傾向(2ページ目)

理学療法士(PT)試験。内科学・臨床神経医学についての問題傾向。やはり他の科目同様、臨床の現場を意識した、新しい問題が増えてきています。

野田 卓也

執筆者:野田 卓也

理学療法士試験ガイド


理学療法士試験 臨床神経医学の問題傾向

脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症など、神経系疾患の罹患者数は非常に多く、国家試験問題も当然、多様な内容になっています。近年の傾向として、言語聴覚士の領域というイメージが強い、嚥下に関する治療法の問題が出題されていること。その他、注目すべきは、ボツリヌス毒素に関する問題が出題されていることです。これは、ここ数年で連続して出題されています。

臨床神経医学の過去問題と解答

過去問題 第52回(2017年)

観念運動失行の検査はどれか。
  1. 「今、何時ですか」
  2. 「右手の薬指はどれですか」
  3. 「歯を磨くまねをしてください」
  4. 「紙を折って封筒に入れてください」
  5. 「このカードに描いてある絵を覚えてください」

この問題の答えは【3】になります。観念運動失行の検査では、指示された動作のジェスチャーが行えるかを調べることに主眼をおいています。なお、時間を聞くのは見当識障害の検査であり、右手の薬指を聞くのは、自身の身体認識を調べる手指失認の検査です。紙を折って封筒に入れるという、物品操作の検査は観念失行であり、カードの絵を覚えるのは記銘力の検査となります。

過去問題 第52回(2017年)

突然の右不全片麻痺を呈して搬送された患者の発症後6時間の頭部CTを図に示す。最も考えられるのはどれか。
脳レントゲン画像

文章から発症状況について解釈し、画像から発症部位がわかるかを問う問題です。毎年、数問は出ますので脳画像の読影を復習しておきましょう。


  1. 視床出血
  2. 被殻出血
  3. 皮質下梗塞
  4. くも膜下出血
  5. 慢性硬膜下血腫

この問題の答えは【2】になります。頭部CT読影の問題になります。選択肢で最も判別がつきやすいのが場所。この画像では明らかに、左被殻部位に出血による高吸収域(白い部分)が認められます。視床は、この出血部位よりもやや中央付近にあり間違いです。他、皮質下梗塞についてですが、この問題では、発症から6時間という超急性期梗塞となり、CTでは写りません。くも膜下出血では、クモ膜下腔内にダビデの星と呼ばれるヒトデ型の高吸収域がみられますがそういった所見はみあたりません。最後に慢性硬膜下血腫ですが、通常、三日月形の高吸収域がみとめられますが、これもみられないため間違いとなります。

過去問題 第51回(2016年)

特発性正常圧水頭症で謝っているのはどれか。
  1. 脳室拡大がみられる。
  2. 小刻み歩行がみられる。
  3. 自発性の低下がみられる。
  4. 髄液で細胞増加がみられる。
  5. 腰椎ー腹腔シャント術が用いられる。

この問題の答えは【4】になります。特発性正常圧水頭症では、髄液量の増加は認められますが、細胞増加はみられないです。問題を解き急ぐと引っかかってしまうので、問題と選択肢をよく読む事が重要になります。その他、特発性正常圧水頭症では、歩行障害、認知症、尿失禁の3兆候が症状として挙げられますのでしっかり押さえておきましょう。


過去問題 第50回(2015年)

ボツリヌス菌毒素製剤の作用機序について正しいのはどれか。
  1. 末梢神経の破壊
  2. ミトコンドリアのATP産生停止
  3. アクチンとミオシン頭部の結合抑制
  4. 抗アセチルコリン受容体抗体の産生
  5. 神経終末部でのアセチルコリン分泌抑制

この問題の答えは【5】になります。ボツリヌス毒素は、神経終末部で神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を抑制し、結果、過剰な筋緊張の抑制に働きます。その他の選択肢ですが、末梢神経の破壊といった器質的な変化は起こさないので1は間違い。また、ミトコンドリアには作用しないので2も間違いとなります。3のアクチンとミオシン頭部の結合抑制を行うのはトロポミオシンです。4の抗アセチルコリン受容体抗体の産生が起きるのは重症筋無力症なので間違いとなります。


過去問題 第50回(2015年)

頭頂葉の病変で生じる徴候はどれか。
  1. 歩行失行
  2. 視覚失認
  3. Anton症状
  4. Parkinson症状
  5. Gerstmann症候群

この問題の答えは【5】です。頭頂葉の障害では構成失行が代表的です。また、優位半球頭頂葉障害ではこれに加え、5,のGerstmann症候群。劣位半球頭頂葉の障害では半側空間無視がみられることがあります。その他の選択肢として、1.の歩行失行は前頭葉内側の病変で生じます。また、2.の視覚失認、3.のAnton症状は後頭葉、4.のParkinson症状は大脳基底核の病変で生じます。

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