メンタルヘルス/依存症(薬物依存症・アルコール依存症等)

あなたも負のスパイラル?スマホ依存症の症状・治し方

現代の日常生活において、携帯、スマホはもはやなくてはならないツール。一方で、スマホをしすぎて実際の人間関係に問題が生じたり、健康な生活が損なわれている場合、「依存症」の状態に近くなっていることも考えられます。スマホ依存症の原因、症状、治し方について解説いたします。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

スマホ

あなたは一日のうち、どのくらいスマホを手にしていますか?

今やすっかり、なくてはならない日常生活のツールになった携帯電話やスマホ。スマホなしでは生活や仕事が回らなくなってしまうという方も、実際少なくないのではないでしょうか。

携帯は私たちのコミュニケーションに革命的な利便をもたらしましたが、多くの指摘があるように、弊害もあるツールです。最近よく問題になっている「歩きスマホ」はもちろん、自転車や自動車運転中にスマホをチェックしてしまうようなことでは、いつ事故が起きても不思議ではありません。仕事中にうっかり私用のスマホチェックをしてしまい、勤務態度を疑われてしまう、ということもあるでしょう。

これらの行動の多くは、ただ単に魔がさしただけかもしれませんが、場合によってはスマホに対するコントロールが利かなくなっている可能性もあります。例えば、スマホをしすぎることで実際目の前にいる人との人間関係に問題が生じてしまったり、スマホ閲覧がやめられずに毎晩無駄な夜更かしをして体調を崩してしまったりということが何度も続くような場合、スマホへのコントロールが利かなくなっていることも考えられます。場合によっては、精神科から見て「依存症」の状態に近くなっていることもあるのです。

今回は、スマホへの依存の問題について、ぜひ知っておいていただきたいことを解説いたします。

度が過ぎるスマホ利用は「依存症」の可能性も

まず、「依存症」とはいかなる状態を指すのかを解説します。例えばアルコール依存症やニコチン依存症、カフェイン依存症など、脳に作用する物質に対する依存症もあれば、ギャンブル依存症や買い物依存症など、それによって気持ちが高揚する行為に対する依存症もあります。これらの依存症の原因は実にさまざまですが、経過には大きな共通点があります。

それは「依存が生じている物質や行為に対するコントロールが全く利かなくなっており、それをすることが生活の中心になっている」ということです。日常生活で本来優先すべきことをする時間がなくなり、栄養バランスが偏ったり、運動不足で心身のコンディションも悪化しやすくなったり、職場でも依存しているもののことが気になって仕事に集中できなくなってしまったり、ということが挙げられます。

依存しているもののせいで日常生活に上記のような問題が生じ始めると、気持ちも冴えなくなりがちです。その冴えない気持ちを紛らわす手段として、依存が生じている物質や行為に、ますますのめり込んで行く……。依存を深刻化させる負のスパイラルに陥ってしまいます。

このスパイラルから抜け出すためには、その原因を断つ事が一番なのですが、依存の原因が何であれ、一旦、依存症のレベルになってしまうと、自力でそれを達成する事は大変難しく、通常は専門家の力が必要になってきます。

スマホなしでも一日が成り立つかをチェック

たとえ「スマホ無しでは生きていけない!」という人でも、多くは依存症のレベルには達していないはずです。とはいえ油断は禁物。そういう方は、まず一日にどの程度、携帯に時間を費やしているかを正確に把握してみましょう。ちらりちらりも、積もり積もれば、かなりの時間になってしまいます。特に必要もないことに1時間以上の時間を費やしてしまうような場合、日常生活ですべきことをする時間はどうしても足りなくなってくるものです。

携帯のコンテンツに夢中になるあまり、仕事のノルマが全然こなせない。自分でもそんなことをしている場合ではないと分かっていても、どうしても携帯の画面に何度も目が行ってしまう。用事もないのに何度も画面のロックを外してしまう。スマホ利用をコントロールする必要性は自覚しているけれど、どうしても止められない……。こうした場合、携帯はもはや日常生活を便利にするツールではなく、日常生活の質を落とす原因になっています。

スマホに限らずですが、何かに依存してしまう背景には、慢性的なストレスで心身に強い負荷が掛かっているケースも少なくありません。場合によっては脳内環境が悪化して、うつ病に近くなっていることもあります。実際に、どの依存症の場合でも、うつ病など他の精神疾患の合併が多いという共通点があるのです。

もしも、スマホ利用のコントロールがうまくできず、日常生活にも深刻な支障が生じていると感じる場合は、精神科受診も考慮してみる必要があります。

スマホ依存症の治療法は? 大切なのは根本的な解決

前段でも触れましたが、依存症の背景には、強い日常のストレスがあることは少なくありません。例えば、スマホが気になりすぎて仕事がおろそかになっているのではなく、仕事での強いプレッシャーをそらすために、つい携帯のコンテンツをチェックしてしまうこともあるかもしれません。

こうした場合、真の問題はスマホ利用のコントロールではなく、ストレスを緩和して、心身のコンディションをいかに良好にするかです。ストレス対策の方法について、ぜひ一度見直してみましょう。十分な睡眠時間と共に、栄養バランスの取れた食事は取れていますか? 適宜休養を取り、心身をしっかり休ませていますか? ストレス対策の基本の一つである、気の合う仲間や家族と過ごす時間も、是非確保したいものです。

とはいえ、気の合う仲間や家族で食卓を囲んでも、みんなが携帯を片手にそれぞれの画面とにらめっこしているようでは、団らんの時間とは言えないかもしれません。人それぞれ価値観、ライフスタイルは違うもので、一概にこうするべきとは言い切れませんが、皆で空間を共有し、皆の顔に笑顔が浮かぶような場を持つことこそ、心が健康になる理想的な環境だと思います。スマホは日常生活を便利にしてくれるツールですが、必ずしも脳内環境を良好にしてくれるツールでないことを、皆さま、どうかご留意下さい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます