ちょっと“知らない”操縦感覚が気持ちいい
早速、走り出してみた。何気なくアクセルペダルを踏み込むと、ドンッ! と勢いよく進む。最初のアシ加減には、慎重さが必要だ。ポルシェターボに初めて乗るような緊張感をもった方がいい。最初の最初だけは。
静かに走ること、それ自体は最早、驚きでもなんでもない。EVだから当然だ、ということをみんな知っている。けれども、都会のビル地下、換気の悪い駐車場のなか、(すぐにペダル操作にも慣れて)ゆっくりと静かに走り出すと。“新しさ”を操る自分自身に対して、ハナ高々というか、気分がよくなることもまた、事実だ。
車体そのものは軽く仕上げられているが、何せ重い大容量バッテリーを積む。車重は軽く2トンを超え、しかも、この大きさだ。加速はよくても、さぞかし、重々しいライドフィールなのだろうと思っていたら、これが軽快で驚いた! 前後の重量バランスのよさと、バッテリーを床下に置く低重心さが利いているのだろう、どっしりとしているのだけれども、動きに当意即妙さが十二分にあって、ちょっと“知らない”操縦感覚である。
それがまた、気持ちいい。正直、重いクルマなのに重いと感じなかったのは、日産GT-R以来、2台目だ。
街中もスイスイと、大きさを気にすることなく抜けていく。回生ブレーキを強めに利かせている(タッチパネルから調節可能だ)から、上手に走らせると、ブレーキを使うことも少なくなってゆく。次第に、ブレーキペダルを踏むことさえ煩わしくなってゆく。
プレミアムスポーツサルーンに遜色ない“ファン”
京都に向かうため、新御堂筋から名神高速にのった。アクセルペダルを思い切って踏んでみる。航続距離が160kmくらいなんて言われると、そんなこと試す余裕はないけれど、モデルSなら心配ない。大阪~京都、どう走り回っても、往復で200kmを超えることはない。多少の“電池ムダ使い”も許される。
加速フィールは、ぐいぐいと見えない何かに引っ張りまくられている、という印象で、まるで個室新幹線のようだ。流れる景色の様子、風を切る感覚がよく似ている。けれども、振動はほとんどないから、新幹線より気持ちがいいかも。
走りの方も、もちろんズシリと安定したものだった。制限速度域内では余裕綽々で、逆につまらないくらい。追い越し加速も実にスムース。クルージングしているだけでも、新しい乗り物に乗っているという満足度が得られる。
圧巻だったのは、高速を降り、しばらく京の街を走り抜けて、嵐山高雄パークウェイにノーズを向けた後だった。
関西でも有数の、高速ワインディングロードである。重さ2トンのEVセダンにとってはさすがにきついだろうと思っていたら、これがまた、“楽しい”のひとこと! ハッキリ言って、ポルシェパナメーラやアストンマーティンラピードといったスポーツプレミアムの4ドアモデルと、次元が異なるとはいえ、遜色のない“ファン”があった。
充電口は左側(ドライバー側)のリアテールランプに内蔵される。100/200Vの通常コンセントと充電ステーション用の双方が使える。大容量に対応した200Vコンセントで1時間あたり85kmの走行距離分を充電できる
モデルS。なるほどそれは、モデルT以来の“衝撃”であった。モデルXにも、期待大だよなあ。