世界各国で500万人以上を動員
大好きな作品がついに開幕!ということで、ワクワクが止まりません。フランス発祥のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』です。2001年にパリで初演し、世界各国で500万人以上を動員しました。宝塚歌劇団でもたびたび上演される人気演目ですが、日本の男女版は2年ぶり。嬉しいことに、大きくスケールアップして帰ってきました。冒頭の「ヴェローナ」。撮影はすべて渡部孝弘
劇場に合わせて装置も衣裳もパワーアップ
まず変わったのは、舞台の構造。左右脇にせり出した3階建てのセットを多用。3階から登場したり、歌ったりなど、劇場の大きさを余すところなく使って、ダイナミックな展開になりました。そして衣裳もチェンジ。モンタギュー家とキャピュレット家がそれぞれスネーク、レオパードと柄で分かれているのは初演と同じですが、ロミオなどメインキャストの衣裳は、若者たちはパンクっぽく、ストリート感を増しています。乳母も初演の牛柄でなく(これはこれで可愛かった!)、レオパ柄になったのは、やはりキャピュレット家の一員という意味を強めたのかしら?王道ミュージカルとはひと味違うキャスティング
そして、何より大きいのはキャストの違い。今回、若者たちの役にミュージシャンや歌舞伎役者さんなど、いわゆる王道ミュージカル畑でないキャストが多く登場したことで、新たな風が吹き込まれた気がします。それはダンサーたちも同様。いい意味で生々しくなったというか、今の渋谷のセンター街にいる若者にも共通しそうな空気感。そんな彼らを取り巻くベテランのキャストがまたいい味を出していて、家と家、若さと成熟、家族と個人、保守と革新、歴史と未来、生と死…そんな対立を明確に見せてくれます。今回、『ロミオ&ジュリエット』を観て痛切に感じたのは、この作品は、特に若者役やダンサーは、歌やダンスが上手い、演技が上手い、という技術だけでは成り立たない、ということです。役者個人が持つ危うさ、エッジ、内面の複雑さ、不安定さや不慣れな感じ…そんないびつさこそが魅力になる。丸く収まらず、自分の殻を破り捨てて突き抜け、エネルギーをそれぞれが爆発させることで、物語のうねりが生まれていく。
このあたりは演出を手掛けた小池修一郎さんの意図通りといえるでしょう。小池さんは、日本での翻訳ミュージカルの既成概念や枠を、この作品で打ち壊そうとしている気がします。新たなエンターテイメントの創造、その勇気ある挑戦には拍手です!
モンタギューの3人による「世界の王」。城田優ロミオ、尾上松也ベンヴォーリオ、東山光明マキューシオ