消費増税が経済に混乱を与えないための「経過措置」とは
国土交通省の資料によると、平成9年に行われた3%から5%への消費税率の引き上げの際の住宅着工数を例にとると、消費税率引き上げ前の駆け込み需要や引き上げ後の反動による落ち込みが現実化していることがわかります(右図参照)。そこで今回の消費税率引き上げ時には、そのようなアップダウンをなるべく平準化し、経済に混乱を与えないような措置が必要とされ、消費税率引き上げ前後に関連していくつかの経過措置が発表されています。
記事「IT、建設、設備、請負業者などにおける消費税対策」で紹介しているように、比較的、単価の大きい建設・工事やソフトウェアの開発についてはもっとも注意を要するところなのですが、書籍等の予約販売、商品の通信販売、旅客等運賃の対価、電気・ガス・水道の対価ということに関しても、経過措置の内容に含まれています。
消費税の一般課税の計算方法は、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことによって計算することとなるのでその際、ひとつひとつの取引を5/105で抽出するのか8/108(あるいは10/110)で抽出するのかを判断することはとても重要なポイントです。注意点をひとつひとつ見ていきましょう。
税率適用の基本的な考え方と経過措置
消費税における税率適用に基本的な考え方は課税取引の4要件のなかに「資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること」とあるので、一般的には「いつ引き渡しを受けたのか」あるいは「いつサービスを受けたのか」で判断すればいいでしょう。したがって、いろいろある取引の中で経過措置の対象になるものは、経過措置の適用の有無を確認し、経過措置の対象にならないものは「いつ引き渡しをうけたのか」あるいは「いつサービスを受けたのか」で税率を適用することとなります。
そのようななかで、消費税法上の経過措置の多くは、消費税率引き上げ予定日の半年前を指定日と定め、実際に税率が上がる日を施行日として、これを基準に考えられているので、まず、これを頭にとどめておいてから各種ケーススタディをみていきます。
予約販売による書籍等の譲渡に対する経過措置(雑誌の年間購読など)
事業者が、指定日前に締結した不特定かつ多数のものに対する定期継続供給契約に基づき譲渡する書籍その他物品に係る対価の全部、または一部を2014年4月1日よりも前に領収している場合には、その書籍の引き渡しを4月1日以後に行っても、その取引については5%の旧税率を適用するというものです。ここでいう定期継続供給とは「週、月、年その他一定の周期を単位とし、おおむね規則的に供給されていること」とされているので、たとえば、年間購読契約を結んでいる週刊誌や月刊誌などの消費税率の適用基準はこの経過措置に基づき判断されることとなります。