キンブ・オブ・世界文化遺産「ベネチアとその潟」
ベネチア共和国の中枢サン・マルコ広場。左がサン・マルコ大聖堂で右が時を知らせる鐘楼。鐘楼は高さ99mを誇り、登ってベネチアを一望することができる
ベネチアは陸と海、キリスト教徒とイスラム教、中世と近世の間にあって他の都市では見られない独自の発展を遂げ、「水の都」「アドリア海の女王」とうたわれる美しい街を築き上げた。今回はイタリアの世界遺産「ベネチアとその潟」を紹介する。
水の都ベネチア(ヴェネツィア、ベニス)
1591年に完成した白大理石造りのリアルト橋。橋のコンペティションにはミケランジェロも応募したが、アントニオ・ダ・ポンテの作品が選ばれたといわれる。下の船は観光用のゴンドラ
答えは船。大小150を超えるといわれる運河には水上タクシー=モトスカーフィや渡し舟=トラゲット、手漕ぎ舟=ゴンドラが行き交い、島のまん中をS字に抜ける大運河カナル・グランデには水上バス=ヴァポレットがゆったりと走っている。
大きな荷物は船で運ぶしかない。だから運河沿いの建物は多くが玄関を運河側に向けている。ベネチアでは運河が道路代わりなのだ。
「運河」というように、毛細血管のように張り巡らされた水の流れは川ではなく人工的に造り出された水路。最初から水を中心にデザインしたところに「水の都」たる所以がある。
水の都をゴンドラ・クルーズ&街歩き!
迷い歩いた先の橋の上からの眺め。水の中から立ち上がる家並みが独特だ。なんでもない景色がとてつもなく愛しく思える
ベネチアの裏通り
ゴンドラで運河に迷い込めばそこは中世。石造りの家々が立ち並ぶ姿、窓手すりに飾られたかわいらしい花々、パステルカラーの壁と洗濯物のコントラスト、迷路のような歩道を走り回って遊ぶ子どもたち、恰幅のいい奥様方の井戸端会議。そんな何気ない町の姿がとんでもなく美しい。
それをいっそう楽しめるのが町歩きだ。運河は直線的に造られているのだが、道路は複雑怪奇。運河を中心に街を築いたからだろうか、曲がりくねったり、人ひとり歩けるだけの細道になったり、行き止まりだったり。
目の前に見える対岸のあの建物に行こう!と思い立ってもなかなかたどり着けないほど複雑だが、迷い込まなければ出会えないすばらしい景色がいくつもあって、まったく飽きることがない。たとえば橋の形ひとつ取っても同じものがない。そして東西約5km、南北約2.5kmほどの島に、そんな橋が約400も存在するのだ。
迷っても島から出ることはないから心配無用。心置きなく迷い歩いてほしい!