北海道産そば粉を使用、店内で削る鰹節のつけ汁でいただく多彩なそば
少し奥まった入口へ進むと暖簾(のれん)の向こうに自動ドア、店内へ入るとその奥にもう1つ暖簾があります。この時点で店の奥行を確認できます。向かって左に大きなカウンターテーブル席、右側には4人掛けのテーブル席が複数、奥にはお座敷、そして個室もあります。店内は古き良き和風の空間。多国籍な印象のある新大久保エリアにおいては逆に稀有(けう)な存在でしょうか。気取りのない、街のそば屋さん風情を感じます。
この日は1人だったので、カウンターテーブルの一角に腰を落ち着けます。オーダーは、そば店の基本、王道の「天せいろ」(1250円)を。ちなみにもっとたくさん天ぷらの付いた「特天せいろ」はプラス500円の1750円……迷いましたが、今回はこちらで。
運ばれてきた内容は、大きな海老天が1本に、青味(ししとう)が2本、そしてもりそば、というシンプルな構成。薬味はネギ、わさび、もみじおろし。そば湯も同時に提供されます。
同店で使用するそばは、入口付近に明示されていますが、この日は北海道産のそば粉。“外二八”というそば粉10に対してつなぎ2という割合です。それほど茶色くない更級系ですね。しっかりと角もあります。
つけ汁は、毎日店内で削った鰹節を使用。もり用のつけ汁は少し濃い目なので、そばの3分の1程度つけて、ズルズルっと音を立てていただきます。
冷・温はそばもちろん、季節ものや丼類、おつまみに至るまで同店はメニューが多彩です。周囲を見回すと見事にみなさん違うものを食べています……掲載写真もきれいで自分のお好みに出会うまで何回か足を運びたくなるメニュー表ですね。
土曜休みで日祝営業、使い勝手の良さを感じる一店
別日に友人と伺ったのは日曜日。同店は土曜日が休みで日曜・祝日は営業するというちょっと変わったスタイルで、昼休憩なしのいわゆる“通し営業”です。休日のそば店ランチ……友人と“飲む気”マンマンでオーダーをします。板わさ、自家製の鴨わさをおつまみに、ビールで乾杯、そして日本酒を……休みの日ならではの醍醐味ですね。〆は、個人的には珍しく温かいそば「あさり南蛮そば」(870円)を、友人は初訪問ということもあり、「せいろ」(650円)を頼みました。
あさりのそばは、たっぷりの貝殻付きのあさりとネギのそば。汁にはバターが溶けていて、あさり出汁といい調和を生んでいます。お酒の後に“貝汁”……合わないワケがないですね。季節のそばもそうですが、メニューにはあまり他のそば店ではお目にかかれない一品があるなど、伝統にしばられず、チャレンジする姿勢が伺えるタイプの老舗店です。
そば単品の量は老舗店にしてはまずまずですが、少し物足りなさを感じるかも知れません。大盛りや、せいろの追加もありますが、同店には、開店の11時半から夕方17時まで、麺類を注文した人に限り、「半ライス・お新香」(50円)というメニューもあります。男女を問わず“量”が欲しい人には嬉しいサービス品かと。
ランチや飲み会、接待など、昼・夜とも使用シーンに合わせて柔軟に対応できそうな同店。個室を備えるなど、駅前の好立地を考えると老舗店としては良心的な価格設定だと思います。
19世紀の終わり、クルマや電話の時代のスタートとともに産声を上げたそば店で、ランチはいかがでしょうか?
■近江家
・住所:東京都新宿区百人町2-4-1 サンビルディング1階
・TEL:03-3364-2341
・営業時間:平日11:30~21:15(L.O.)、日祝11:30~20:45(L.O.)
・定休日:土曜日
・地図:Yahoo! 地図情報